Anap-Muput森林管理区、Pandan・Binyo川、SPF社、Anap川  鮫島 弘光

Anap-Muput森林管理区、Pandan・Binyo川、SPF社、Anap川

鮫島 弘光(京都大学 東南アジア研究所)

2011/8/5-11 Anap-Muput森林管理区
 Jason、小泉、鮫島はAnap-Muput森林管理区で、これまでの継続調査を行った(写真1)
写真1 Anap-Muput森林管理区の伐採直後の森林:伐採中にもかかわらずヒゲイノシシ、ホエジカ、各種シベット、ブタオザルなど様々な種の哺乳類が生息していることが明らかになった。 / Photo1 Forest in Anap-Muput Forest Management Unit shortly after logging operations: various mammals inhabit the forest while logging operations underway.
 Jasonと小泉は、Jasonがカメラトラップで哺乳類のモニタリングをしている3つの塩場およびその周辺で植生プロットを作り、樹木群集組成のデータを取った。Jasonと鮫島は塩場周辺と全域の合計11プロットに設置してある100台弱の自動撮影カメラのデータ回収・バッテリー交換も行った。この結果コンセッション全域における各種哺乳類の分布が明らかになりつつある。

2011/8/13-14 Keresa社、Tubau
 Keresa社のオイルパームプランテーション内では、徳地・福島が水質サンプルの採集を行った。TubauのL氏宅では家の前を流れるKemena川に甲山が水位計を設置するとともに、徳地・福島が河川水を毎月サンプリングしてくれるように依頼した。

2011/8/15-17 Pandan川、Binyo川
 徳地、福島、甲山、Logie、鮫島が河川調査のために行った。BintuluからSebauhまで車で、Sebauhからは船をチャーターし、Kemena川、その支流のPandan川、そのまた支流のBinyo川で河川水をサンプリングしながら遡航した。Binyo川ではRh Irai(Iban)に宿泊した。徳地・福島・鮫島は船を雇い、さらに上流のPenyilan川の泥炭湿地林などで河川水のサンプリングを行った。甲山はRh Iraiに気象ステーション、水位計を設置し、徳地・福島はRh Iraiの小学校の先生に河川水の毎月のサンプリングを依頼した(写真2)。Pandan・Binyo川はJelalong川と同じKemena川の支流である。しかしJelalong川流域では択伐施業コンセッション、オイルパームプランテーションが広がるのに対し、Pandan・Binyo川流域ではアカシアプランテーションと泥炭湿地林が広がるなど、流域の景観構造が大きく異なる。これが水位・水質の変動パターンにどのような影響を与えるのか興味深い。
写真2 Rh Irai前のBinyo川:この場所に水位計を設置し、毎月の河川水サンプリングを依頼した。/ Photo2 Binyo River runs in front of  Rh Irai: install water-level gauge in this spot and ask the residents taking river water samples on monthly basis.
 Rh Iraiからは徳地・福島・鮫島はRh Iraiの村長の車で、陸路Bintuluまで帰った。この道の大半はSPF社のアカシアプランテーション内を通過するが、所々の河川で水を採集した。甲山はExpress(乗り合い船)でBintuluまで帰った。その後クチンの灌漑排水局を訪問して交渉し、Bintulu・Tatau 30地点の時間雨量データ、日水位データを提供してもらえるようになった。

2011/8/19-22
 徳地・福島・鮫島はZedtee社のAnap-Muput森林管理区を訪問し、最上流からSanganやTatauの街の前の川の水まで採集した。Anap-Muputの伐採後20年近く経っている林班や、Bukit Kana保護区からの水はKemena, Tatau流域の中でもっともきれいな水であった。

2011/8/22
 徳地・福島・鮫島はSPF社のJoanes氏の車で、SPF内のアカシア人工林、保護林などをめぐり、各地で水質サンプルを採集した(写真3)。Joanes氏はコンセッション内の保護区をできる限り守りたい、そのために根拠となるようなデータをほしいと考えており、今回の調査にも非常に協力的であった。
写真3 SPF社コンセッション内の保護区の一つBukit Jugan: Binyo川の源頭部に位置する。SPF社はコンセッション内の3割近くを保護地区としているが、その多くは調査がされていない。 / Photo3   Bukit Jugan, one of conservation areas in SPF concessions: nearly 30% of the concession land is designated conservation areas but most of them remain uninvestigated.
  これらの調査の結果、Kemena、Tatau川の全域で水を採集するとともに、各地で水位・水質の継続モニタリングをすることが可能になった。詳しくは本号の福島記事を参照のこと。

2011/8/23-25 (図1

写真1 Anap-Muput森林管理区の伐採直後の森林:伐採中にもかかわらずヒゲイノシシ、ホエジカ、各種シベット、ブタオザルなど様々な種の哺乳類が生息していることが明らかになった。 / Photo1 Forest in Anap-Muput Forest Management Unit shortly after logging operations: various mammals inhabit the forest while logging operations underway.

 加藤・市川昌広・鮫島はBintuluからZedtee社のAnap-Muput森林管理区を訪問し、Anap川最上流のRh Mawang(Iban)まで行って宿泊した。Rh Mawangは村の前をUlu Anapの清流が流れる、大変きれいな村である(写真4)。

写真4 Rh Mawang: Anap川最上流の村。 / Photo4 Rh Mawang: a village located in the most upstream of Anap River.
 Rh Mawangからは船を雇ってSanganまでAnap川を下った。途中Rh Enteri、Rh Gerina(以上Iban)、Kerangan Paji、Pelawan(以上Bukitan)に立ち寄り、社会経済の全戸インタビュー、狩猟に関しての聞き取りを行った。(写真5・6)。Anap川沿いの集落はオイルパームを持たず、焼畑を行っている世帯率が多い、また伐採会社で働く世帯が多くなど、Jelalong川沿いの集落とは生活の様相が大きく異なる。また狩猟活動はJelalongやBinyo流域よりも盛んな印象を受けた。

写真5 Rh GerinaよりAnap川上流方向を望む:右岸(写真の左側)ではSangan-Kapit接続道路のための測量が行われていた。 / Photo5 Look in the direction of upstream of Anap River from Rh Gerina: in the opposite riverbank in the picture, a land survey was underway for the connection road between Sangan and Kapi. 写真6 Kerangan Pajiでの聞き取り:ロングハウスの廊下に村の人達が集まり、一戸一戸の生業を教えてくれた。 / Photo6 Making Interview at Kerangan Paji: the residents of the longhouse gathered to tell us their living forms.
 Sanganから市川氏は日本へ帰国したが、加藤・鮫島はTawauの街から上流へ30分ほどのRh Jalong(Tatau)へ訪問した。この村ではTatau人の歴史だけでなく、現在では独立した村を持たず、Tatauの街で華人と結婚しているLugat人の歴史についても聞くことができた。この調査の後、加藤はTatauの街のLugatの人たちを訪問し、彼らの歴史についてさらに興味深い情報を得ることができた。

注:RhはRumahの略で村の意。カッコ内はそれぞれの村の民族名を示す。

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