“Indonesian migrant workers…” Riwanto Tirtrosudarmo氏講演会

“Indonesian migrant workers: with particular reference in the oil palm plantation industries in Sabah, Malaysia”
Riwanto Tirtrosudarmo氏講演会

2010年12月11日 京都大学 東南アジア研究所

  12月11日(土)に京大稲盛財団記念館で開催された、第15回アブラヤシ研究会において、本科研で招へいしたインドネシア科学院(LIPI)のRiwanto Tirtrosudarmo氏に研究報告をしていただきました。リワント氏は、オーストラリア国立大学で博士号を取得した後、インドネシア科学院で上級研究員をなさっています。専門は政治人口学で、インドネシアと東南アジアにおける人口移動の政治学的研究をなさっています。研究会では、マレーシアのプランテーションにおけるインドネシア労働者の状況について、最新の研究結果を報告していただきました。

■マレーシアにおける外国人労働者の概況
 2005年の統計資料によると、マレーシアにおける外国人労働者のうち、インドネシア人が最も多く、68%(121万人)を占めています。不法滞在者の数を加えると、200万人に達するといわれています。インドネシア人労働者のうち、業種別にみて最も多いのがプランテーションの労働者で26%、次いで家事労働者が24%、建設業が18%となっています。経済格差などが移民労働者を排出する要因となっています。どの業種においても、共通してみられる労働者側の問題としては、低賃金、雇用者によるパスポートの管理、住居環境の悪さです。建設業と製造業では危険を伴う仕事も多くあります。建設業では離職率が高く、その後プランテーション労働者に流れ込む場合が多くみられます。さらに、ホテルやレストランでのサービス業では、人身売買と結びついているなど、多くの問題があります。

■プランテーション産業とインドネシア人労働者
 プランテーション産業は、インドネシア人が最も多く就労している産業です。特徴としては低賃金、パスポートが雇用者に管理されている、長時間の重労働、仲介業者による搾取などの問題があげられます。孤立した環境で、最低限の宿泊施設が提供されるのみなので、離職し、建設業に流れ込むことも多いです。インドネシア人労働者の賃金は建設業の場合は、1日25-60リンギットなのに対し、プランテーションでは25-40リンギットとやや低めです。マレーシア政府は外国人労働者の数を年々減らす計画にあり、2008年の210万人から2015年には170万人に減らす計画があります。しかしながら、プランテーション産業における外国人労働者の割合は2008年の16%から2015年の20%増やす計画にあります。 
研究会のメンバーに語りかけるRiwanto氏 / Dr. Riwanto explained the situations of Indonesian workers in Malaysia.
■マレーシアにおけるパームオイル産業
 現在マレーシアは、世界第2のパームオイル輸出国です。マレーシアで生産されたパームオイルの内、約6割が中国やヨーロッパ、パキスタンなどへ輸出されています。2008年マレーシアは、1,770万トンのパームオイル生産しており、450万ヘクタールの農園においてアブラヤシを栽培しています。これまで、ゴム、カカオ、ココナツが植えられていた土地にアブラヤシが植えられており、栽培面積は徐々に増えています。マレーシアには153の農園があり、67%の農園は半島部にあります。58万人がプランテーションで働いており、そのうち35万人は外国人です。サバ州においては労働者の90%がインドネシア人であるといわれています。
講演会の参加者に語りかけるRiwanto氏 / Mr. Riwnato shared his point of views with the participants of the meeting.
■サバ州におけるアブラヤシ・プランテーション
 サバ州には、70万ヘクタール農地にアブラヤシが栽培されており、58の搾油工場があります。サンダカン省とタワウ省を中心にプランテーションが広がっています。サバ州は、マレーシア全体においても最も輸出量が多く、全体の25%をサバ州から輸出しています。また、パームオイル輸出からの歳入の30%を、サバ州が占めています。サバ州における外国人労働者は、独立前はジャワ人と華人が多かったのに対し、独立後は、インドネシア人とフィリピン人が多くを占めます。サバにおけるインドネシア人労働者で最も多いのがジャワ人、ついでブギス人、トラジャ人となっています。インドネシア人労働者が多い一方で現地住民の就労の問題も起っています。現地住民はたとえ貧しくてもプランテーションで働こうとせずに、先住地に住み続けようとします。なぜなら、月収600リンギットというのは現地住民にとっては低すぎる賃金であり、居住環境も悪く、重労働であるからです。
当日はアブラヤシ研究会のメンバーを含めて20名以上が参加した / Our members and the participants of Research Meeting for Oil Palm gathered to listen to the story of Mr. Riwanto.
■移住労働者の抱える様々な問題
 移住労働者は多くの面で搾取されやすいといえます。パスポートは雇用者に管理され、低い賃金で働かなければならないため、負債の悪循環に陥りやすいといえます。しかしながら、マレーシア政府がこの問題を積極的に解決しようとはしていません。インドネシア領事館も、移住労働者の支援をほとんどしていないため、インドネシア人は頼りにしていません。インドネシア人労働者の避難所となっているのはキリスト教団体のみであるといえます。
(報告:加藤裕美)

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