Keresa社~Sungai Asap~Jelalong流域 祖田 亮次 Posted on 2012/04/02 by nakane Keresa社~Sungai Asap~Jelalong流域 祖田 亮次(大阪市立大学文学研究科) 今年の夏も、サラワクでの共同調査を行ったが、現地ではいくつかのグループに分かれて行動することもあった。おおよそのグルーピングを示すと、石川・奥野・加藤・市川哲・Jayl Langub・Daniel Chew・祖田を中心とする民族間関係の調査グループ、徳地・甲山・福島・鮫島・Logie Semanからなる水文・水質調査のグループ、生方・定道によるプランテーション調査グループなどである。このほかにも、小泉・鮫島・JasonによるAnap-Muput地区の生態調査や、鮫島・加藤・市川昌による同地区の社会調査、内堀・加藤によるKakus調査などもあった。ここでは、石川・祖田を中心とした活動の報告を行う。 8月12日(金)に、石川・鮫島・生方・定道・祖田が、土地開発企業でRSPO認証も保有しているKeresa社の本社ビル(Kuching)を訪問し、社長のGraeme Iain Brown氏をはじめとする幹部の前で、科研プロジェクトの説明を行うとともに研究打ち合わせを行った。これによって、Keresa社が運営するオイルパーム・プランテーション内での調査が認められ、13~14日にBintuluのプランテーション・サイトを視察することができた。ビントゥルからは、徳地・甲山・ジェイソン・福島・加藤が合流し、徳地・福島は操業地内で水サンプルの採取も行った。その後、いくつかのグループに分かれて行動したが、生方・定道は15日もKeresa社で資料調査を継続する一方、加藤・祖田は周辺のロングハウスで、小農によるオイルパーム生産の動向について調査した。 2010年度は木材伐採企業のZedtee社とアカシア植林企業のSarawak Planted Forest(SPF)社の操業地の視察を行い、各操業地内での調査について同意を得ることができたが、今年はオイルパーム操業地での本格的な調査を開始することができ、大きな進展を見ることができた。今回のKeresa社との合意については、Sarawak Oil Palm Plantation Owners Association(SOPPOA)会長のMelvin Goh氏も、プランテーション内での外国人による調査が認められたことは画期的で、今後の産学共同調査のモデルになりうると評価している。 17日からは、石川・奥野・市川哲・加藤・祖田に加えて、マレーシア・サラワク大学(UNIMAS)のJayl LangubとDaniel Chewも参加しての共同調査を行った。訪問したのは、Sungai Asap、Suai、Sebauh、Tubau、Jelalong川上流域などで、随時、分かれたり合流したりしつつ、また19日からはLogie Seman(元・森林局)の参加も得て、共同調査と各自の調査を並行して行った。具体的には、Jayl・奥野・加藤は狩猟採集民を中心とする先住民の生業・生活あるいは自然認識に関する調査を、Daniel・市川は森林産物の流通をめぐる華人-先住民関係に関する調査を、石川・祖田は焼畑民と狩猟採集民との関係性に関する調査を行った。Logieは市川の調査をサポートする傍ら、木材伐採に関わってきた現地キーパーソンのライフヒストリーを収集した。 調査参加者の関心が少しずつオーバーラップしており、また、華人、Iban、Penan、Kayanといった多様な民族やアクターからの視点で議論を交わすことができたのは、大変有意義であった。 24日にはいったん解散し、奥野はLong UrunでのPenanの調査、市川はBelagaでの華人コミュニティの調査、祖田はRajang川流域での河川調査を行うため、Bintuluを離れた。石川はKuchingに戻り、サラワク大学で新たなフィールド・ステーションを設置するための協議・調整を行った。 今年の共同調査は、昨年度のように全員そろって行動するのではなく、本格的な調査を行うためにいくつかのグループに分かれながらも、Bintuluのフィールド・ステーションを基点に随時合流して、相互に状況報告をしあったり、部分的に共同調査を行ったりするというスタイルを取った。そのため、非常に複雑なスケジュールを組まざるをえず、なおかつ現地での細かい予定変更も頻繁に発生したが、鮫島氏の周到なアレンジによって、各自が充実した調査活動を行うことができたと思う。また、このような調査を行うにあたっては、機材やサンプルの保管場所としても、情報交換の拠点としても、フィールド・ステーションの存在がきわめて効果的であると実感した。