商品連鎖研究会(第1回・第2回)
商品連鎖研究会(第1回・第2回)
第1回:2012年1月27日 京都大学 東南アジア研究所 2012年1月27~28日の全体会合に先立ち、27日の午前中に商品連鎖研究会を行った。これは、京都大学東南アジア研究所の共同利用・共同研究拠点「熱帯環境からみた商品連鎖の時空間的分析――グローバルな分野横断型研究の創出に向けて」(以下、商品連鎖研究会)が主催し、本科研基盤Sが共催として開催した研究会である。 本研究では、東南アジアの生物資源から生み出される諸産物の商品連鎖分析を通して、生産地(川上)と消費地(川下)を結ぶ社会・経済・文化・生態関係を実証的に検討し、熱帯バイオマスと人々の関係性をローカルからグローバルにいたる諸レベルで考察することを目指している。27日の発表者および発表題目は以下のとおりである。 石川 登 (京都大学): 「ボルネオ北部における森林由来商品の歴史的背景」 祖田 亮次(大阪市立大学) : 「地理学と商品連鎖」 遠藤 環(埼玉大学) : 「アジアにおけるインフォーマル経済とグローバル・チェーン」 まず、石川氏が、マレーシア・サラワク州のクムナ川/ジュラロン川流域を事例に、ボルネオ北部における具体的な商品(たとえば、ジュルトンやダマール、鉄木板から、丸太材まで)の流通過程とその歴史的な展開過程について概説し、商品連鎖研究会と本科研プロジェクトとの共同研究の可能性について示唆した。次に、祖田が、農業地理学や農業経済学の分野を中心に展開されてきた、商品連鎖の考え方や関連する商品流通プロセスに関する議論を整理し、それらの議論の熱帯産商品への適応可能性について検討を加えた。さらに、遠藤氏は、地域経済学的立場からの商品連鎖・価値連鎖の理論的枠組に関する解説を行った上で、東南アジア大陸部、特にタイの服飾関係商品のグローバルな流通展開について、長期間の現地調査にもとづく事例報告を行った。第2回:2012年2月5日 京都大学 東南アジア研究所 2012年2月5日に第2回目の商品連鎖研究会を行った。第1回目と同様に「商品連鎖研究会」主催で、本科研が共催しての開催であった。 発表は以下の2名にお願いした。 金沢 謙太郎(信州大学): 「熱帯雨林と香:沈香はどこから来てどこへ行くのか」 荒木 一視(山口大学) : 「商品連鎖のアプローチ及び食料研究におけるいくつかの潮流」 金沢氏は、ボルネオのプナン社会での長年の調査経験を踏まえ、プナンの沈香の採集方法やそれらの流通プロセスについて、シンガポールやクアラルンプール、香港、ドバイなど、世界各地における調査の情報も交えながら、具体性のある話題提供を行った。金沢氏は、実際にお香を焚きながらの報告を行い、研究会の場を和ませるものであった。 荒木氏は、インド、中国、韓国、日本などでの生鮮食料品の流通を調査してきた経験を踏まえつつも、食品流通をめぐる諸理論・アプローチについて整理した。農業地理学者として、フードシステム論から商品連鎖、価値連鎖、フードチェーンなどの理論的展開過程について、特に空間的な観点から検討を加えた。荒木氏の報告は、多分野に通じる内容を含んだもので、活発な質疑応答が展開された。 なお、商品連鎖研究会については、こちらのホームページをご参照下さい。