狩猟調査報告Ⅰ-Miri-Bintulu道路~Samarakan道路

狩猟調査報告Ⅰ
(2012年7月1日~7月3日)
加藤 裕美/鮫島 弘光

 2012 年 7月 1日~ 7月 3日にかけて、加藤 裕美・鮫島 弘光の両名でイノシシなどの動物狩猟調査と村落での生業調査を行いました。
 調査対象は 11 村(地図参照)で、4村でイノシシ のサンプリングの依頼をし、実際にイノシシの毛サンプルを1つ取りました。

 調査の詳細は以下の通りです。

調査対象:
1. Miri-Bintulu道路沿い 6村
2. Samarakan道路沿い、TatauTatau川まで 4村
3. Sg. Silasilasilasのツバメハウスを建ている村 1村


(図:調査対象の村)

2012年7月1日(日)
 朝、オフィスで鮫島さんと落ち合い、そのまま調査に出発する。最初に、ミリ-ビントゥル道路沿いにある、Kampung Penan Muslim, Batu 10にてインタビューをする。村の門も立派で個別住居も立派、公民館やモスク、運動場などもあり、村にはWifiが通っている。たまたま、村では、Karnival Gagawというイベントを開催中で、村長は忙しそうだったが、日本から来たというと親切に応対してくれる。フットサル大会の他、警察、クリニック、IC作成、Wifi事業など政府による様々な展示があり、1ブースごとに紹介をしてくれる。自分たちの村が発展していることに誇り思っていると感じられた。村での主な生業調査(稲作、アブラヤシ栽培、賃金労働など)を行い、狩猟についてもインタビューをする。しかし、あまり活発には狩猟を行っておらず、調査票の依頼はしない。その後村の歴史や他のPenan Muslimの村との関係や他民族との混住状況についてインタビューをする。
 2村目に、ミリ‐ビントゥル道路をさらに進み、イバンの村Rh. Garenaでインタビューを行う。ロングハウスは建設中である。現在この村では土地問題が深刻なようで、そのことについて村長はしばらく熱く語る。その後、村全体での生業について、稲作、アブラヤシ栽培状況、賃金労働の状況などのインタビューを行う。狩猟は、まだ活発に行っており、猟師もたくさんいるようであった。狩猟方法、範囲、販売価格などについても聞く。調査票への記入と毛の採集を依頼しようとしたが、狩猟場所から直接Simpang Sebauhに肉を売りに行ってしまうことが多いとのことで依頼はしなかった。この周辺の村では同じように盛んに狩猟をしているらしいとのことで、周辺の別の村に依頼をすることを検討する。
 Similajau Caféで昼食をとり、3村目に、Sime Darbyのすぐ隣にある、Rh. Sumokを訪れる。イバンの村である。ロングハウスを建設中でdampaに住む村長にインタビューを行う。村全体の生業活動として、稲作やゴム採集、賃金労働について聞き取りを行い、中心的な生業であるアブラヤシの栽培状況についてはやや詳しくインタビューを行う。狩猟についてもインタビューをするがほとんど行っておらず、調査票の依頼はしなかった。
 4村目に、Simpang Bakunを越え、ミリ-ビントゥル道路をさらに進み、Rh. Padangというイバンの村を訪れる。村長が不在のため、副村長にインタビューを行う。村全体の生業活動について聞く。この村は、アブラヤシ栽培以外にも、コショウ栽培や野菜栽培が盛んであったが、稲作はおこなっていない。村の裏には保存林があるため、そこでの狩猟がよくおこなわれるようである。狩猟方法やあらかじめ選んだ特定の動物(30種ぐらい)の生息状況についてインタビューを行う。副村長に調査票とイノシシの毛採集袋を渡してくる。トゥアックを2瓶ごちそうになる。

2012年7月2日(月)
 2日目は、Samarakan道路沿いにある村をAnap川に出るまで訪れる。最初(5村目)に、Rh. Intingというイバンのロングハウスでインタビューをする。Segan川から移住したため、建設中であった。生業のインタビューを始めると、アブラヤシ販売で工場に騙され3 たという話が持ち出され、そのままアブラヤシ栽培、稲作、賃金労働などについて、聞き取りを行う。ここでもNCR問題が明確化しているようで、そのことについて村長の話を聞く。稲作やアブラヤシ栽培は盛んであったが、狩猟は盛んではなかったので、調査票の依頼等はおこなわなかった。 6村目に、Samarakan道路をさらに進み、イバンのRh. Entikaを訪れる。村人はみな畑に行って不在で、たまたま昼食に帰ってきた村長の奥さんにインタビューを行う。この村は、以前はAnap川沿いに住んでいたが、Borneo Pulp and Paperの工場予定地となったため、道路沿いに移住してきた。周囲には同じような村が3村ある。土地が足りていないのが問題とのこと。村全体の生業のありかたについてインタビューを行う。都市での賃金労働が盛んで、狩猟はほとんど行っていなかった。
 7村目に、Samarakan道路をさらに進み、イバンのRh. Bairを訪れる。これまでの村に比べて、村人の数がはるかに多い。村長以外の人も積極的に話に答えてくれる。パルプ工場建設に伴う移住については、土地不足、水不足が顕在化しており、不満が聞かれた。村全体の生業についてインタビューを行う。焼畑、アブラヤシ栽培が盛んな村で、町で仕事をしている人は少数である。狩猟については、猟師が何人かいるようで、詳しい調査を行う。特定の種の生息状況について聞き、村長に調査票への記入を依頼し、サンプル袋を渡してくる。
 8村目に、Samarakan道路の最終地点にある、Rh. Jimbaiを訪れる。Anap川沿いにあるイバンの村である。非常に長いロングハウスであるが、町での賃労が盛んで、普段の在村者は少ない。村全体の生業としては、稲作、アブラヤシ栽培とも、農業全般があまり盛んではなく、漁業を少し行っている。狩猟についても聞き取りを行う。狩猟も盛んではないが、細々と行っていた。大型動物よりもマメジカなどの小型種の方が頻繁に狩猟するようである。特定の動物の生息状況についてインタビューを行う。
 Niah Caféで遅めの昼食をとり、今度は、Sebauh道路へ入る。9村目に、基盤Sでツバメハウスの建設を行っている、Rh. Anthonyというイバンのロングハウスを訪れる。この村はNanas Silasといわれるパイナップルの有名な産地で、他にもキャッサバなどの野菜の栽培とビントゥルでの販売が盛んな村である。アブラヤシ栽培も盛んであったが、稲作を含め他の農業はあまり盛んではない。野菜栽培の話を中心に聞く。狩猟についてもインタビューを行うが、現在ではわずかながら行っているようである。トゥアック1瓶をご馳走になる。

2012年7月3日(火)
 この日は、運転手さんの車検が朝にあり、出発がやや遅くなる。初めに、Simpang Sebauhでイノシシを売っていたRh. Muking(以前、祖田さんと加藤で小農の調査に訪れた村)の男性に聞き取りを行う。とれたイノシシの場所、方法についてインタビューをする。イノシシを獲るのはお安い御用ということで、イノシシの毛の採集と調査票への記入を依頼する。
 10村目に、Labang川上流にある、Rh. YohというPenan Muslimの村を訪れる。遊動時代の生活、移動の歴史、周辺のPenanの村との往来について詳細な話を聞く。その後、村全体の生業活動についてインタビューを行う。アブラヤシ栽培は行っているが、稲作は全く行っておらず、そのほかの農業もあまり盛んではない。狩猟についても盛んではなかったので、村の歴史や他のPenanとの関係について詳しくインタビューをおこなう。
 最後の11村目にRh. Limaiというイバンのロングハウスを訪れる。Rh. Yohの少し手前にあるロングハウスである。ロングハウスが長いので道を挟んで2棟に分かれている。村長は、カンティンを経営しており、品物の搬入で忙しそうだったので、少し待ってからインタビューを進める。この周辺では最初にSkrangから入植した村であり、周辺にあるイバンの村は、この村から別れて新しくできた村である。村の歴史や、村全体の生業についてインタビューを行う。稲作、アブラヤシ栽培共に半数ぐらいの世帯が行っていた。狩猟についても比較的盛んに行っており、インタビューを行う。狩猟方法や特定の動物の生息状況についてインタビューを行う。イノシシ以外にもブタオザルの狩猟が盛んなようである。Rh. Yohで採れたブタオザルもイバンの村で売ると言っていた。その後、Similajau Caféでやや遅めの昼食をとる。その後、そのまま鮫島さんを空港まで送っていき、オフィスに戻る。

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