狩猟調査報告Ⅱ-Tatau-Bintulu道路~Tatau川~Kakus川

狩猟調査報告Ⅱ
(2012年8月7日~8月9日)
加藤 裕美/鮫島 弘光

 2012年8月7日~8月9日にかけて、加藤 裕美・鮫島 弘光の両名で2回目の狩猟調査を行いました。前回のMiri-Bintulu道路沿い、Samarakan道路沿い、Sg. Silasに加え、今回はTatau-Bintulu道路沿いの3村、Anap川下流の2村、Kakus川の2村、Sebauh川沿いの2村、合計9村で聞き取り調査を行いました。
 また、Rh. Arjey(Kakus川)、Rh. Sigan(Tatau川)、Rh. Gawan(Sebauh川)の3村で狩猟記録シートへの記入とイノシシの毛のサンプリングを依頼しました。
 調査村の位置は下図の通りです。

図.調査村の位置(赤*は今回の調査村、黒*は前回7月の調査村)

2012/08/07 (火)
 朝、ビントゥル・オフィスで鮫島さんと落合い、車をチャーターしてTatau-Bintulu道路沿いの村を訪れる。ドライバーはLudut ak Dianさん。半日チャーターでRM110(ガソリン代込み)。まず、Tatau-Bintulu道路沿いの二次林とアカシア林が優占する地域を訪れる。
1村目に、Rh. Clement Banyang, Sugai Sebembanを訪問した。この村を含めた以下の3村は二次林とオイルパーム・プランテーションとアカシア・プランテーションが混在する地域に位置した。日帰りでBintuluへ通える圏内に位置し、町で働く人が多いものの在村率は高い。農業全般は盛んでなく、狩猟もほとんどおこなっていない。
 2村目に同じくTatau-Bintulu道路沿いのRh. Ben ak Tedong, Sungai Setiamを訪れる。この村でも村外労働が非常に盛んで、特にアブラヤシ・プランテーションでの就労が多い。昼間はほとんど人がいないため、農業も狩猟も盛んではなかった。Bakunの方からイノシシを売りに来るとのことであった。
 3村目にRh Sagin ak Jamir, Sungai Semanokを訪れる。ここは在村率が非常に高く、空き家はない。KanowitのRanan出身のイバンである。村長がおり、高齢者も多く、歴史の話に花が咲く。 Rentapの乱のことも語られる。稲作は全戸でしているものの、狩猟は盛んではなかった。この後、Tatauの町に行き、食料品などを買いLugatに少し会い13:30のエクスプレス・ボートに乗る。
 4村目にTatau川上流のKakus川沿いにあるRh. Ajey ak Kenai, Nanga Minaへ行った。Tatauの町からRh. Ajeyまでの運賃はRM18で1時間半で着く。川と直角の向きに2棟のロングハウスが立つ。BintuluからSamarakan経由の道路も通じており、村には車やバイクが目立つ。村長のAjey氏にJelalongやPandanのPunanとの婚姻関係、他民族との婚姻関係について聞き、続いて生業全般についてインタビューをする。最も多い生業が農業で、続いて村外労働も盛んである。数年前にゴムの値段が高かった時は、伐採キャンプで働いている人も村に戻ってきてゴム採集をしたという。アブラヤシは最近植え始めたばかりだが、将来的には全世帯で植える予定である。村周辺の植生やSPFのアカシア・プランテーションとの問題、また狩猟についても聞き取りをする。この村ではスイロクを禁忌としている人が多かったことが印象的であった。狩猟記録シートへの記録と毛のサンプリングを依頼する。
 その後、村人の船で上流まで送ってもらい、5村目にRh. Ado ak Bilongを訪れる。Rh. Ajeyから5馬力の船で25分、2人でRM50の運賃を払う。2008年の火災でロングハウスが焼失し、現在は個別住居にすむ。以前はこの辺りで一番長いロングハウスだった。村の前に半分焼けたkeliringが立つ。村長も副村長も不在で、ちょうど帰村したPenghulu SanokMagai氏の家にお世話になる。Penghuluの父、Magai Lepit氏(先代のPenghulu)に、昔のKakus川とBah川間の徒歩での行き来や、Bukit Bekuyatでのツバメの巣採集の 話を聞く。夕食後、現在の村での生業についてPenghulu Sanok氏に話を聞く。この村では7割ほどが在村しており、農業を行っている。労働者を雇ってゴム採集をする人もいる。イバンが入植した当時の歴史やイバンとPunanの婚姻関係についても話を聞く。その後、狩猟について詳しいインタビューをする。

2012/08/08(水)
 朝、村のなかを鮫島さんと散歩する。Penghulu Sanok氏をはじめ多くの人は、畑仕事に出かける。家の軒先で雑談をしていた、3人の男性にインタビューをする。ミツバチの話、ツバメの巣採集について話を聞き、狩猟については種ごとの詳しいインタビューをする。昼食をごちそうになり、11:20のタタウ行きのエクスプレス・ボートに乗り下流のイバンの村を目指す。
 約1時間で6村目Rh. Ngubang ak Ajum, Nanga Sidangに到着する(運賃RM12)。村長にインタビューをする。周辺の植生の状況や村全体の生業活動について聞く。村で農業をする人と村外労働者は半々ぐらいである。狩猟については全く動物が獲れていなかったので、詳しいインタビューはしなかった。この村からTatauまでロングボートでRM12である。対岸からビントゥルへ車のトランスポートもある。村人に、下流のRh. Siganまで15馬力の船で送ってもらう(50分で着き、運賃は2人でRM60)。
 7村目にRh. Siganak Rengi, Sungai Tekalitを訪れる。村の南北には、アカシア・プランテーションやオイルパーム・プランテーションがある。2001年9月10日まで80世帯あり、この地域で一番長いロングハウスだったが、火事で焼失してからは4村に分かれた。村で空き家はなく、男性は伐採会社で働いている人が多いものの、女性が在村をして稲作などの農業をしている。アブラヤシ栽培は始めたばかりである。この村の近くではラタンもまだたくさん残っており、多くの女性がラタンで平カゴを作っていた。狩猟については非常に盛んで網で狩猟をすることもある。上流のPunanとここのIbanでは狩猟方法が異なり、Punanは車を使って狩猟に行くが、ここのIbanはまだ昔ながらに徒歩で狩猟に行くという。村長の娘さんに狩猟記録シートへの記入とサンプルの採集を依頼する。この地域のロングハウスの人たちは中国人本土から来た男性「チナメン」を大変警戒している。ロングハウスで強引に物を買わせようとしたり、騙されたりしたことがあるからだ。ここからTatauまで車でRM50であるが、偶然通った学校の先生の車でTatauまで無料で送ってもらう。

2012/08/09(木)
 Tunggang ak Bejiさんの車でKemena川南回りの道でSebauh川流域に至り、この流域の村をめぐる(1日チャーターRM200+ガソリン代)。はじめに、Rh Sapit ak Luangへ寄り、この周辺でよく狩猟をする村の情報を得た。8村目に、よく狩猟をしている村ではないがアカシア林近くのRh.Nadeng ak Agatへ行く。村長は畑に行っており不在だった。村外労働が盛んな村で、農業は全体的に盛んではない。アブラヤシについては近くに住んでいるカヤンに実を運搬してもらっている。村の周囲はアカシア林が多く、分厚い森がないため、狩猟は盛んでなかった。
 9村目にRh Gawanak Bandauを訪れる。良く狩猟をすると教えてもらった村である。村長がおり、彼にインタビューをする。この周辺の村々はTa Annとジョイント・ベンチャーに参加している。稲作は盛んで、小農アブラヤシ栽培もしており、在村率が高い。アブラヤシの実は、3時間かけて価格の良いKeresaへ売っている。Keresaが周辺の小農に施している援助についても(多少誇張されているが)知っている。近くに水源林や湿地林があり、そこに動物が多く生息しているとのこと。狩猟が非常に盛んであったため、村長に狩猟記録シートと毛のサンプルを依頼してくる。

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