アブラヤシ小農土地利用調査
2013年11月:アブラヤシ小農土地利用調査
2013年11月21~28日に、ジェイソン・ホン、加藤裕美、祖田亮次の3名で、トゥバウのイバン集落における土地利用変化の現地調査を行った。今回の調査では、特にアブラヤシに焦点を絞って、イバンの小農たちがどのようにアブラヤシ畑を拡大してきたのかを明らかにすることを目的とした。
東南アジアにおける小農アブラヤシ栽培に関する研究は、インドネシア、マレーシアを中心に、ここ10年で増加傾向にある。これは、従来プランテーション優位と考えられてきたアブラヤシ産業に、相当数の小農が参入しつつある現状を反映しているといえる。
しかし、実際に小農がどのような土地利用を行っているのかについては、これまでほとんど報告がなされていない。とくにサラワクの内陸部においては、そもそも測量も登記もなされていない土地がほとんどで、なおかつ(元)焼畑民の土地保有や相続の慣習を反映した土地利用を行っているため、それらを理解し、実際の状況を把握するのは、簡単なことではない。
私たちは、これまで小農-企業関係や、認証制度RSPOの小農への効果(影響)、アブラヤシ栽培を巡る都市-農村関係などに関する調査を行ってきたが、アブラヤシ栽培に関わる小農の土地利用のあり方を把握することで、彼らのアブラヤシ産業への参入可能性をさらに詳しく検討できるのではないかと考え、今回の調査を実施することになった。
調査手順としては、まず、衛星画像をもとに、新旧の休閑二次林、焼畑地、アブラヤシ畑、果樹畑などの、大まかな土地利用分類図を事前に作成した。とくにアブラヤシの畑については、一筆一筆の畑に境界線を引いた(図を参照)。プランテーションと比べて、一筆一筆の畑が非常に小さく、各筆ごとに植栽配列が異なるため、隣接する畑との違いは容易に判別できた。
上記の調査によって、土地利用変遷図を作成することで、小農アブラヤシ畑が道路沿いを中心に拡大してきたこと、焼畑休閑林を利用した形でパッチ状に拡大してきたことなどが明らかになった。また、聞き取りによって、土地の利用方法は個人(各世帯)の裁量に強く依存していること、小農アブラヤシ生産の拡大は土地占有権の主張という意味も持っていること、ロングハウス・コミュニティ以外の外部者が土地の購入・譲渡・貸与を経てアブラヤシ畑を開発し始めていることなども分かってきた。 サラワクの内陸における小農アブラヤシ栽培はさまざまな要素が絡み合った結果ではあるが、内陸先住民の慣習的な土地占有権との連続性を持ったものであり、また、政府の森林開発政策や企業による開発行為とも深く関係していることは、容易に推察できる。これらの点については、稿を改めて詳しく議論したい。
ただ、衛星画像からの判別にはやはり限界がある。現地では、衛星画像をもとに作成した地図を携えて、村の古老と歩きながら、畑地境界を微修正すると同時に、土地の占有者や土地利用履歴を聞き取りするというものであった。現地では、土地の境界が人々によって明瞭に意識されていた。小さな竹やぶや、わずかな窪地、あるいはたった一本の木など、私たちが普通に歩いているだけでは、間違いなく見逃してしまうようなものが、土地境界として残されていた。また、それぞれの畑の占有者や植栽時期、その土地の利用履歴などについても細かく知っていて、想定した以上に順調に調査を進めることができた。
上記の調査によって、土地利用変遷図を作成することで、小農アブラヤシ畑が道路沿いを中心に拡大してきたこと、焼畑休閑林を利用した形でパッチ状に拡大してきたことなどが明らかになった。また、聞き取りによって、土地の利用方法は個人(各世帯)の裁量に強く依存していること、小農アブラヤシ生産の拡大は土地占有権の主張という意味も持っていること、ロングハウス・コミュニティ以外の外部者が土地の購入・譲渡・貸与を経てアブラヤシ畑を開発し始めていることなども分かってきた。 サラワクの内陸における小農アブラヤシ栽培はさまざまな要素が絡み合った結果ではあるが、内陸先住民の慣習的な土地占有権との連続性を持ったものであり、また、政府の森林開発政策や企業による開発行為とも深く関係していることは、容易に推察できる。これらの点については、稿を改めて詳しく議論したい。