土地利用図作成の実践:クムナ川のトゥバゥ周辺からジュラロン川下流を事例として…
土地利用図作成の実践:クムナ川のトゥバゥ周辺からジュラロン川下流を事例として…
Jason Hon(WWFマレーシア)
参考資料
衛星画像 高解像度のマルチスペクトル仕様のパンクロマチック衛星画像はDigital Globe (http://www.digitalglobe.com)より2度に分けて購入した。注文番号は052896239040_01 (01 および 02で使用分)および 052927222010_01 (01で使用)。このレポートではこれらの画像に地理的特徴に応じて便宜的に名称を付けて必要に応じて参照している。地域の西側に当たる部分はTubauImage(Tubau Bazaarに因んで名付けた)東側に当たる箇所はJelalongImage(Jelalong川に因んだ名称)(図 1で使用)とした。このTubauImageは2012年の8月5-13日の間に撮影されたイメージでJelalongImageの方は2012年8月5日時点のイメージとなっている。これらからマルチスペクトラル(多波長:カラー画像)とパンクロマチック(白黒)のラスター・データセットが入手できた。セルのサイズはそれぞれ2m間隔と0.5m間隔となっている。
a. 森林 ― 直立する木々、密集した林冠 b. 衰退した森林 ― 林冠の30%以上が失われた状態、不揃いな林冠、古い轍や低灌木の存在 c. 森林内の空き地 ― 伐採された森林、倒木、露呈した地面、林冠の無いスペースに見える地面、時にはそうした場所が低い灌木や草地であることも d. アブラヤシ栽培目的で伐採された森林 ― アブラヤシ・プランテーションに隣接する森林が開かれているような場合、恐らくそうした空間はいずれプランテーションになるものと思われる。 2.アブラヤシの植栽地域
a. 成熟したアブラヤシ畑 ― 結実するほど大きくなったアブラヤシが生育し、林冠は密集している。 b. 未成熟のアブラヤシ畑 ― 結実するほど大きくなっていないアブラヤシ、林冠は小ぶりで地表が見える箇所がある。 c. Temuda Yr0アブラヤシ畑 ― 一年以内にアブラヤシが植栽されたテムダ d. プランテーション・テラス ― プランテーションの為に整地されたもののまだ植栽されていない地域 3.テムダ(焼畑とその休閑林)
a. 古い休閑林 ― 元焼畑所有耕作地で5年以上経年している地域 b. やや古い休閑林 ― 元焼畑所有耕作地で2-5年間休閑状態にある地域で現時点では雑草や灌木に覆われている地域 c. 新しい休閑林 ― 焼畑が行われてから2年以内の休閑林。灌木に覆われているか、植栽されて間もない状態 d. プランテーション・テラス ― プランテーションの為に整地されたもののまだ植栽されていない地域 4.換金作物栽培地
a. ゴム ― ゴム・プランテーション b. 果樹園 ― ドリアン、マンゴー、ジャック・フルーツ、ヤシ等の高木の果樹園 c. その他の換金作物栽培地 ― タピオカ、コショウ、などの畑 5.アカシア
a. アカシア・プランテーション ― アカシア植栽林(他樹種が植えられている可能性もある) b. 比較的最近植栽された、または皆伐されたアカシアの植栽地 ― 現存するアカシアプランテーションに隣接する地域でプランテーション拡張目的で皆伐された、あるいは最近植栽された土地 6.水系
a. 主要河川 ― クムナ川、トゥバウ川、ジュラロン川 b. 小河川 ― 主要河川の支流あるいはその上流域 c. 灌漑地 ― 灌漑目的で造成された人工の水路、多くの場合アブラヤシ栽培地から泥炭地水の排水目的で作られている d. 池沼 ― 天然あるいは人造の溜池や湖、水産用の養殖池も含む 7.道路
a. 主要道路 ― Simpang Bakun とトゥバウを結ぶハイウェイ b. 周辺道路 ― 主要道路から分岐して伸びる幹線道路、主要な居住地を結ぶ道路 c. 伐採道路 ― 未舗装で、主に伐採のために利用される b. プランテーション道路 ― アブラヤシ・プランテーションの敷地内に作られた未舗装の道路 8.人工建造物
a. 建物類 ― 住居、店舗、村落、医療施設、学校およびその他の建築物 b. 貯木地 ― 伐採木の集積所 c. 送電線 ― 高圧送電線 8.人工建造物
a. 建物類 ― 住居、店舗、村落、医療施設、学校およびその他の建築物 b. 貯木地 ― 伐採木の集積所 c. 送電線 ― 高圧送電線 9.Keresaプランテーション
(Keresa 社のプランテーションに限定した別カテゴリー) a. 事務所およびスタッフの居住施設 b. アブラヤシの搾油施設 c. 廃液処理池 10.草地と灌木
道路、送電設備や居住地の造成に伴って出来た雑草や灌木に覆われたゾーン 次ページ以降に取得した画像データ上でのカテゴリ別の該当する地域のサンプルを示す。
結果
2種のラスター・データセットを用いることで全体の96.84%のエリアを分類することが出来た。残りの3.16%のエリアは雲に隠れていた分で、視認できずカテゴリー分類が出来なかった箇所である。 全体の中で一番大きな範囲を占めたのが森林エリアでその割合は55.33%に上った。ただしこの中で健全な状態の森林は2.59%に過ぎず、残りの52.74%もの森林は伐採地あるいは衰退林に分類されるものであった。 その次を占めたのは所有耕作地で対象地域全体の21.85%を占めていた。内訳をみると古い休閑林が17.53%と一番大きな分量を占めていた。やや古い休閑林と新しい休閑林が続いた。やや古い休閑林と新しい休閑林に関して合計値3.67%としたのは多くの場合、これら2つのカテゴリに分類される土地利用が重なっているからである。すでにあるテムダに隣接する最近皆伐された森林の場合、その土地はほぼテムダと見なすことが出来るので「焼畑耕作地」とカテゴリ分けし、対象地域の0.65%を占めている。テムダの中では比較的最近、例えば2年以内に耕作が行われた休閑林は3.99%を占めていて、住民たちは焼畑目的でほんのわずかな土地しか利用していないことになる。面積に換算するとこれは528.10 ヘクタール、該当する面積全体の 0.85%を占めることになる。加えて該当地区の0.11%を占めるテムダにはアブラヤシの植栽地に換えられた計算になるが既に若いアブラヤシが植えられている土地もその多くが元々は所有耕作地だったことを考慮するとこの数字は控えめ過ぎるとも言えよう。 対象地域中でアブラヤシの植えられている土地は全体の15.92%を占めていて土地利用のカテゴリ分けで言えば3番目の位置を占めている。アブラヤシの植栽地では成熟したアブラヤシが植わった土地は9.12%、5,666ヘクタールに上る。未成熟のアブラヤシの植生地が6.36%、3,954ヘクタールでそれに続いている。対象地区の約0.32%の土地はプランテーション・テラスに分類されると思われるがこれはいずれアブラヤシが植栽されると思しき土地である。アブラヤシが植栽されたテムダにおいてアブラヤシ栽培を目的として最近切り開かれたものなのか、それとも既存のアブラヤシ・プランテーションが拡張された結果なのか、その判別がはっきりとしない土地利用も見受けられる。企業経営による大規模なオイルパーム・プランテーションと小作農が運営するプランテーションの境界線も明確に引くのは難しく、結果として土地利用区分の中で重複を招くことにつながっている可能性がある。 今回の調査対象地区はSarawak Planted Forest社の対象地域に収まってはいるが、土地の大部分はまだアカシア・プランテーションにされてはいない。アカシアが植林された土地、または植林されつつある土地の比率は対象地区の僅か1.35%に過ぎない。
参考資料
衛星画像 高解像度のマルチスペクトル仕様のパンクロマチック衛星画像はDigital Globe (http://www.digitalglobe.com)より2度に分けて購入した。注文番号は052896239040_01 (01 および 02で使用分)および 052927222010_01 (01で使用)。このレポートではこれらの画像に地理的特徴に応じて便宜的に名称を付けて必要に応じて参照している。地域の西側に当たる部分はTubauImage(Tubau Bazaarに因んで名付けた)東側に当たる箇所はJelalongImage(Jelalong川に因んだ名称)(図 1で使用)とした。このTubauImageは2012年の8月5-13日の間に撮影されたイメージでJelalongImageの方は2012年8月5日時点のイメージとなっている。これらからマルチスペクトラル(多波長:カラー画像)とパンクロマチック(白黒)のラスター・データセットが入手できた。セルのサイズはそれぞれ2m間隔と0.5m間隔となっている。
ArcGIS 10.1
イメージ解析ソフトにはEnvironmental Systems Research Institute, Inc. (Esri©)社製のArcGIS 10.1を使用した。データフレームの属性はDigiGlobeのデータセット上のラスターに準じており、世界測地系(WGS84)・横メルカトル座標系ゾーン49Nに基づいて投影されている。マルチスペクトラルのラスターデータはパンクロマチックのラスターデータを使って、赤・緑・青(RGB)のカラー画像でありながら、パンクロマチック・ラスターと同様の解像度を得られるようにした。
ラスターデータはまず正規化植生指数(NDVI)を使って植生の有無で分類した。次に画像を目で見て植生の境界を決め、異なったタイプの植生に分類した。植生域分類の詳細に関しては次のセクションを参照のこと。
土地利用の分類
全体で大まかに見て対象地域における土地利用に関して9タイプに分けることが出来たが、それらを詳細に見ていくことで更に細かな分類に分けることも出来た。各カテゴリーを分類する際の基本ルールと基準は以下にリストアップした。目視によって分類したため、森林地域などの分類は大まかなものに留まっている。土地利用のカテゴリは以下の通り:
1.森林地域
a. 森林 ― 直立する木々、密集した林冠 b. 衰退した森林 ― 林冠の30%以上が失われた状態、不揃いな林冠、古い轍や低灌木の存在 c. 森林内の空き地 ― 伐採された森林、倒木、露呈した地面、林冠の無いスペースに見える地面、時にはそうした場所が低い灌木や草地であることも d. アブラヤシ栽培目的で伐採された森林 ― アブラヤシ・プランテーションに隣接する森林が開かれているような場合、恐らくそうした空間はいずれプランテーションになるものと思われる。 2.アブラヤシの植栽地域
a. 成熟したアブラヤシ畑 ― 結実するほど大きくなったアブラヤシが生育し、林冠は密集している。 b. 未成熟のアブラヤシ畑 ― 結実するほど大きくなっていないアブラヤシ、林冠は小ぶりで地表が見える箇所がある。 c. Temuda Yr0アブラヤシ畑 ― 一年以内にアブラヤシが植栽されたテムダ d. プランテーション・テラス ― プランテーションの為に整地されたもののまだ植栽されていない地域 3.テムダ(焼畑とその休閑林)
a. 古い休閑林 ― 元焼畑所有耕作地で5年以上経年している地域 b. やや古い休閑林 ― 元焼畑所有耕作地で2-5年間休閑状態にある地域で現時点では雑草や灌木に覆われている地域 c. 新しい休閑林 ― 焼畑が行われてから2年以内の休閑林。灌木に覆われているか、植栽されて間もない状態 d. プランテーション・テラス ― プランテーションの為に整地されたもののまだ植栽されていない地域 4.換金作物栽培地
a. ゴム ― ゴム・プランテーション b. 果樹園 ― ドリアン、マンゴー、ジャック・フルーツ、ヤシ等の高木の果樹園 c. その他の換金作物栽培地 ― タピオカ、コショウ、などの畑 5.アカシア
a. アカシア・プランテーション ― アカシア植栽林(他樹種が植えられている可能性もある) b. 比較的最近植栽された、または皆伐されたアカシアの植栽地 ― 現存するアカシアプランテーションに隣接する地域でプランテーション拡張目的で皆伐された、あるいは最近植栽された土地 6.水系
a. 主要河川 ― クムナ川、トゥバウ川、ジュラロン川 b. 小河川 ― 主要河川の支流あるいはその上流域 c. 灌漑地 ― 灌漑目的で造成された人工の水路、多くの場合アブラヤシ栽培地から泥炭地水の排水目的で作られている d. 池沼 ― 天然あるいは人造の溜池や湖、水産用の養殖池も含む 7.道路
a. 主要道路 ― Simpang Bakun とトゥバウを結ぶハイウェイ b. 周辺道路 ― 主要道路から分岐して伸びる幹線道路、主要な居住地を結ぶ道路 c. 伐採道路 ― 未舗装で、主に伐採のために利用される b. プランテーション道路 ― アブラヤシ・プランテーションの敷地内に作られた未舗装の道路 8.人工建造物
a. 建物類 ― 住居、店舗、村落、医療施設、学校およびその他の建築物 b. 貯木地 ― 伐採木の集積所 c. 送電線 ― 高圧送電線 8.人工建造物
a. 建物類 ― 住居、店舗、村落、医療施設、学校およびその他の建築物 b. 貯木地 ― 伐採木の集積所 c. 送電線 ― 高圧送電線 9.Keresaプランテーション
(Keresa 社のプランテーションに限定した別カテゴリー) a. 事務所およびスタッフの居住施設 b. アブラヤシの搾油施設 c. 廃液処理池 10.草地と灌木
道路、送電設備や居住地の造成に伴って出来た雑草や灌木に覆われたゾーン 次ページ以降に取得した画像データ上でのカテゴリ別の該当する地域のサンプルを示す。
結果
2種のラスター・データセットを用いることで全体の96.84%のエリアを分類することが出来た。残りの3.16%のエリアは雲に隠れていた分で、視認できずカテゴリー分類が出来なかった箇所である。 全体の中で一番大きな範囲を占めたのが森林エリアでその割合は55.33%に上った。ただしこの中で健全な状態の森林は2.59%に過ぎず、残りの52.74%もの森林は伐採地あるいは衰退林に分類されるものであった。 その次を占めたのは所有耕作地で対象地域全体の21.85%を占めていた。内訳をみると古い休閑林が17.53%と一番大きな分量を占めていた。やや古い休閑林と新しい休閑林が続いた。やや古い休閑林と新しい休閑林に関して合計値3.67%としたのは多くの場合、これら2つのカテゴリに分類される土地利用が重なっているからである。すでにあるテムダに隣接する最近皆伐された森林の場合、その土地はほぼテムダと見なすことが出来るので「焼畑耕作地」とカテゴリ分けし、対象地域の0.65%を占めている。テムダの中では比較的最近、例えば2年以内に耕作が行われた休閑林は3.99%を占めていて、住民たちは焼畑目的でほんのわずかな土地しか利用していないことになる。面積に換算するとこれは528.10 ヘクタール、該当する面積全体の 0.85%を占めることになる。加えて該当地区の0.11%を占めるテムダにはアブラヤシの植栽地に換えられた計算になるが既に若いアブラヤシが植えられている土地もその多くが元々は所有耕作地だったことを考慮するとこの数字は控えめ過ぎるとも言えよう。 対象地域中でアブラヤシの植えられている土地は全体の15.92%を占めていて土地利用のカテゴリ分けで言えば3番目の位置を占めている。アブラヤシの植栽地では成熟したアブラヤシが植わった土地は9.12%、5,666ヘクタールに上る。未成熟のアブラヤシの植生地が6.36%、3,954ヘクタールでそれに続いている。対象地区の約0.32%の土地はプランテーション・テラスに分類されると思われるがこれはいずれアブラヤシが植栽されると思しき土地である。アブラヤシが植栽されたテムダにおいてアブラヤシ栽培を目的として最近切り開かれたものなのか、それとも既存のアブラヤシ・プランテーションが拡張された結果なのか、その判別がはっきりとしない土地利用も見受けられる。企業経営による大規模なオイルパーム・プランテーションと小作農が運営するプランテーションの境界線も明確に引くのは難しく、結果として土地利用区分の中で重複を招くことにつながっている可能性がある。 今回の調査対象地区はSarawak Planted Forest社の対象地域に収まってはいるが、土地の大部分はまだアカシア・プランテーションにされてはいない。アカシアが植林された土地、または植林されつつある土地の比率は対象地区の僅か1.35%に過ぎない。
著者:Jason Hon 日本語訳:中根 英紀 監修:鮫島 弘光
本稿はJason Hon執筆による英文記事を翻訳したものである。