2014年春、メンバー活動報告:サラワクでの講演会

 2014年3月5日に、マレーシア・サラワク州クチン市のAngkatan Zaman Mansang(AZAM)において、Possible Degradation of Rural Communities due to Depopulation and Aging in Sarawak: Examination based on Similar Observations made in Rural Areas in Kochi, Japanと題する講演会が開かれた。この講演会は、プロジェクト・メンバーの市川昌広氏とSarawak Development Institute(SDI)のSim Ah Hua氏によって企画されたもので、市川氏がサラワク州および高知県での調査研究に基づいた研究発表を行った。

 発表の前半では、20世紀後半、とくに1980年代以降の、サラワクにおける農村-都市間人口移動と、先住民村落(ロングハウス)における人口減少・高齢化についての概要が述べられた。とくに、市川氏がMiri地域を中心に行ってきた調査から、資源利用の知識・技術が受け継がれなくなっていることや、農業活動に関わる儀礼や文化が失われつつあることなどが、近年の問題として指摘された。

 発表の後半は、日本の過疎問題について詳細な報告がなされた。1960年代以降の急速な都市化と、農村地域における人口減少についての概要が示された後に、高知県大豊町などにおけるいくつかの限界集落を事例に、さまざまな社会的・経済的・文化的問題が紹介された。具体的には、少子高齢化による小学校の統廃統合や、耕作放棄地の増加、杉林の荒廃と地滑りの頻発、資源利用知識の途絶、儀礼や集会の減少など、多様な地域問題があることが示された。

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 その一方で、高知県馬路村や徳島県上勝村などにおける特産品のブランド化に成功した事例や、各地で実践されている耕作放棄地の再利用、そうした活動における都市住民の関与なども紹介され、高知大学が進めている中山間地域の再活性化への取り組みと、その可能性についても語られた。

 フロアからは、数多くの質問やコメントが寄せられた。特に焦点となったのは、人口の都市への移住により農村の疲弊は世界のさまざまな地域でみられるグローバルな課題であり、問題はではどうすればよいのか答えを見つけることだという指摘である。

 これに対して、日本では、過疎地域の問題に対する根本的な解決策が未だに見出されていないことも事実であり、こうした地域における継続的な調査や実践的な関与も重要である。また、近年、農村疲弊の現象がみられるサラワクが、日本と同じ轍を踏まないような方策を考える必要があることも主張された。現在のサラワクにとって、日本が経験した過去半世紀の農村-都市関係の変化から、批判的に学ぶべき点がありうる。その意味で、日本人研究者として、サラワクの現状を調査するだけでなく、日本の農村地域の歴史と現状についての知見を引き続き提供して、日本とサラワクの間で情報交換を進めていきたいとの考えが示された。

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 平日の午前9時からという時間帯にもかかわらず、会場にはAZAMや隣接するSDIのスタッフだけでなく、各種政府機関やサラワク大学(UNIMAS)などからも多くの研究者・行政官が参加し、会場は40名超の聴衆でほぼ満席となった。また、RTM(Radio Televisyen Malaysia)やBorneo Post、星洲日報など、マスコミ関係者の参加もあり、日本の農村事情の事例紹介に高い関心が払われていることが実感できた。

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