プログラム概要

頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム:世界の成長と共存を目指す革新的生存基盤研究のための日本・アセアン協働強化

日本学術振興会(JSPS)が平成26年度から新たに開始した「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」に、京都大学東南アジア研究所の申請した「世界の成長と共存を目指す革新的生存基盤研究のための日本・アセアン協働強化」(平成26年度~平成28年度)が採択されました。

本プロジェクトについて

成長のダイナミズムと調和のある共存社会の両立をどのように実現・維持するかという問題は、現代社会における世界共通の課題です。

その中でも近年のASEAN諸国は、工業化による高度な成長と急速な社会の変容を経験してきましたが、最近では単線的な先進国へのキャッチアップに留まらない個性を示しはじめ、生存基盤研究に対して新しい示唆を与えつつあります。

本プロジェクトは、ASEANの自然環境、社会経済条件がもたらす生存基盤研究への新しい英知を探る一連の研究を「革新的生存基盤研究」と位置づけ、京都大学が自然科学、人文社会科学、あるいはその融合アプローチによって個別に進めてきた日本でトップレベルの研究を、双方向の人的交流を通じた現地研究機関との協働強化によって統合的に一層深化させ、そこで得られる知見やその方法論を広く現代世界における生存基盤の多様なあり様とそれへの国際的な協力関係のあり方についてのモデルを発信することで、世界における「革新的生存基盤研究」の中核となることを目指します。

京都大学で部局横断的に進められてきた生存基盤研究は大きく以下の3つの方向にまとめることができます。

  • 1)「ハイブリット型成長」の可能性
    ASEAN経済は輸出製造業による工業化過程を辿りつつ、新しい環境エネルギー資源やバイオ由来の技術革新という経済成長の新しい可能性を示しつつあります。
    それは都市と農村、産業の担い手、エネルギー需給、社会福祉等再分配制度などに関わる社会の新しい変容をもたらすであろうし、そこに技術革新と技術協力の新しい方向が生み出されてくる可能性が秘められています。
  • 2)「環境再生」に関わる可能性
    ASEAN地域は、急速な経済成長のもとで急激な都市化、プランテーション開発、鉱物採掘などにより森林破壊が進み、生物多様性の喪失も加速度的に進む状況にあり、水資源不足も課題となりつつあります。
    ASEAN地域の位置する熱帯・亜熱帯地方は、気候変動の影響が最も高い地域である上に、経済成長に伴う環境変容により、その脆弱性は高まっています。
    日本の誇る最先端の科学技術研究の成果、文理融合型アプローチを在地の知と組み合わせて、ASEAN独自の「環境再生」モデルを作り上げることができれば、在地性も重視しているだけに、そのモデルは世界的にも魅力的なものとなるはずです。
  • 3)「安寧社会」の実現
    ASEANは、日本と共に環太平洋造山帯の上にあり、太古から地震や火山等の災害の影響下にあります。
    また、21世紀には、急速に少子高齢化が進むことが見込まれています。
    日本が最先端の科学研究に基づいて開発する住民の「安全・安心」を実現する諸技術および21世紀の高齢化社会に最適化した社会保障やケアの制度設計は、いずれもASEAN地域でその有用性を図ることで、より汎用性の高い資産へ向上させることができます。
    同時に、ASEANは、世界で有数の文化的多様性に富んだ地域でありながら、民族間・宗教信徒間の紛争を最小限にとどめ、多元的な共生関係を維持してきた伝統をもちます。
    最先端の科学技術と社会制度に、地域独自の文化的伝統の深層理解を融合させ、「安寧社会」のモデルをASEANから構築することは、地球社会の未来を大きく開く可能性をもっています。

それぞれは自然環境、社会経済条件に複合的に関わる課題であり、本事業の個別の共同研究はその複数の方向に対して知見を生み出すことを目指します。

本プロジェクトは上記の課題への挑戦を、京都大学の各部局でASEANと生存基盤研究を牽引してきた研究グループを京都大学アセアン・プラットフォーム(仮称)として有機的につなぐことで、総合的に文理融合型のアプローチをもって取組むことを特徴とします。

その独創的な取り組みとして、頭脳循環の連携先を、ASEAN地域において在地の生存基盤研究を牽引している世界トップレベルであるASEANの大学に絞り込み、本研究グループとの連携を強化して「革新的生存基盤研究」を深化させ、その研究成果を積極的に国際共著論文として公表します。

さらに日本-ASEAN学術シンポジウムを開催して本研究グループの研究成果を戦略的に世界に発信することで、相乗的に国際共著論文数と被引用数を増加させ、ひいては、本研究グループの「革新的生存基盤研究」の世界的な優位性を向上させます。

ponchi2014

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