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趣旨



本研究会は、東南アジア大陸山地部とそれに隣接する中国南部の山地部を対象とした研究情報や地域情報の交換、大学院生を含む研究者の交流を目的としています。共通の関心は、自然環境の保全、生業や生活の変容、人間生態などですが、それらと密接に関連する人口移動や民族、経済ネットワーク、開発政策およびそれらの歴史的な変遷なども取り込んで、間口の広い研究会にしていきたいと考えています。

近年まで、ベトナムやラオスの北部山地や中国雲南省でのフィールドワークは困難でした。調査許可がなかなか取得できなかったのに加えて、交通の便も悪かったからです。ところが近年、これらの国々でも外国人による調査がかなり許可されるようになりました。加えて交通・通信手段の改善も進んでいます。長期滞在型のフィールドワークも可能になりつつあり、実際に何人かの若手研究者が調査研究に着手しています。これから活発に展開されるであろう調査研究活動を、少しでも円滑で効果的なものにするうえでこの研究会が役立てば、と考えています。

東南アジア大陸山地部は、東南アジアの中でも森林資源の残された数少ない地域であり、地球レベルの生物多様性保護にとってきわめて重要な地域です。したがって森林資源保全に対して国際的に強い圧力がかけられています。一方、現地には、焼畑を主たる生業とする人々が多数暮らしています。焼畑は森林資源破壊の元凶と考えられており、焼畑地は厳しく規制されつつあります。それが地域住民の生業や生活を大きく変えようとしています。東南アジア大陸山地部では、このようなグローバルな視点に立つ政策とローカルな生活システムの摩擦が顕在化しつつあります。

東南アジア大陸山地部は、地域レベルの視点からもきわめて興味深いところです。山地部は、いずれの国においても、経済や政治のコアから外れており、少数民族が卓越する地域です。したがって生活水準が低く、経済的に貧しく、社会的な不平等を甘受せざるを得ない状況にあります。このような地域較差や貧困問題は、国レベルの大きな課題です。とはいえ山地部の人々は歴史的に築いてきた国境を跨いだネットワークをもっています。かつてこのネットワークは、中国と東南アジアやインドをつなぐ交易路として大きな役割を担っていました。近年の地域経済の発展は、このような交易活動を再び活性化するかもしれません。

このようにダイナミックで多様な顔をもつ東南アジア大陸山地部をいっしょに研究していきませんか。

研究会の活動として、年に3回程度、セミナーを開催していきたいと思います。開催日は、基本的には6月、10月、2月に設定しますが、いろいろな都合で不定期にならざるを得ませんので、その都度、案内を出します。このような研究会の案内や関連する情報交換を促進するためにメーリングリストを活用しています。メーリングリストには、東南アジア大陸山地部に興味をお持ちの方ならどなたでも参加していただけます。参加ご希望の方は、リスト加入受付をご覧ください。

世話人:
河野泰之(京都大学東南アジア研究所)
林行夫(京都大学東南アジア研究所)
速水洋子(京都大学東南アジア研究所)
竹田晋也(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
柳澤雅之(京都大学東南アジア研究所)
富田晋介(京都大学東南アジア研究所)

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