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Cinta Laut


海の恋人:チンタラウト号

Dr. OSOZAWA Katsuya / Ehime University
遅沢 克也(スラウェシ科研研究分担者:愛媛大学農学部)

■2005年度の活動:7月12日〜8月21日 スラウェシ島スプルモンデ諸島での調査に従事




Cinta Laut号は海域研究の動く拠点として科学研究費補助金「海域研究の拠点づくりとウォーレシア海域における生物資源利用・管理の動態」(代表者遅沢克也、平成14〜16年度)の支援を受けて建設され、はれて、2003年の5月に命を授けられた。

船の建設に先立つ2002年の7月にLembaga Perahu(海域教育研究所)が設立されている。海域研究の活性化と海域研究の担い手づくりを主目的とするこの組織がこのCinta Laut号を所有し、航海スケジュールを管理しており、我々の趣旨に賛同する若者を募集している。当面は調査航海を第一義的としているが、将来的には、例えば、その航海の帰路では調査地の物産を運び、資金調達が図られるような柔軟な運営が検討されている。経済動乱とそれ以降の経済格差の進行が続くインドネシアでは、若手研究者たちは困窮し、特に大学院生たちの調査資金を捻出することは極めて困難になっているからである。

とにもかくにも面白い研究を目指すこと。白けきった若者たちに、毛穴が総毛立つような学問的な興奮を与え、彼らの胸の奥底に眠っている夢を覚醒させることができる研究をどう実現するか。そして、若い世代からの共感をどこまで得られるのか。そのことが我々の海域研究の拠点づくりの試金石になると考えている。

2004年度からは、この科学研究費補助金「インドネシア地方分権下の自然資源管理と社会経済変容」(研究代表者田中耕司)の支援を受けて、南スラウェシ州の西方海域のスペルモンデ諸島の航海調査を全面的に展開中である。

航海中は夜な夜な、ゲストスピーカーによる特別講義が開かれる。この夜は、研究分担者の赤嶺淳による講義だった。かくして、Cinta Laut号の甲板は大学のゼミ空間となっていく。乗り合わせた研究分野の異なる若者が熱心に聞いている中で、非常に興味深いのは、島々から若者が夜陰に乗じて忍び込んできて、聴講する者が現れること。煌煌と光るCinta Laut号の照明に惹きつけられて、何事かと忍んできたにちがいないのだが、彼らは赤嶺の講義をどう聞いたのであろうか。


 
いずれにしろ、赤嶺の話はすばらしかった。世界史の中で、時代性の中で、地域史を個人史を描く意味を熱く語った。一ヶ月以上も経ったので詳しい内容は忘れてしまったが、赤嶺は語り部であることを悟った瞬間であった。

上の写真で背中を向けているのが私(遅沢)で、その右が長男の浩(ゆたか)、左が次男の泰(やすし)。向こうの船べりにいるのが、右から、モカ(海洋生物)、水野(地域計画)、アジス(船舶工学)、アスカル(地質学兼用心棒)、ウディ(森林生態)の面々。画面には現れていないが、イファン(NGO)も参加し、熱心な質問を浴びせた。水野の息子マルクやモカさんの娘さんたちはどこかに隠れている。
(2005年10月)

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