亡命の政治学 ―権力の国際的基盤をめぐる比較研究

研究代表者:相沢 伸広(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
共同研究者岡本 正明(京都大学・東南アジア研究所)
      宮城 大蔵(上智大学・グローバルスタディーズ研究科)
      町北 朋宏(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
      山尾 大(九州大学・大学院比較社会文化研究院)
      日向 伸介(京都大学・大学院アジアアフリカ地域研究研究科)
      小島 敬裕(京都大学・地域研究統合情報センター)

実施期間:2011-2012年

 

研究概要:

ピブン元首相 日本亡命中写真(ピブン夫人葬式本より抜粋)

ピブン元首相 日本亡命中写真(ピブン夫人葬式本より抜粋)

本研究会では、政治指導者の亡命判断にある政治的背景とそこから明らかになる権力の国際的基盤を解明する。植民地期以降の代表的な政治変動において、国王や大統領、首相の亡命事案、そして亡命しなかった事案データを収集し、亡命という政治判断がどのようになされてきたのかを、東南アジアを中心としてアジア全域で明らかにする。その結果、各国政府の国際的権力基盤が、国家形成、権力維持、体制崩壊といった政治的節目でどのような重要度をもっているのかを分析する新たな視座を提示する。

 

詳細:

ビルマ元首相ウ・ヌ 自伝(Nu, U. and U. K. Win (1975). U Nu, Saturday's son, Yale University Press.) より、序文

ビルマ元首相ウ・ヌ 自伝(Nu, U. and U. K. Win (1975). U Nu, Saturday’s son, Yale
University Press.) より、序文

2011年、チュニジアのジャスミン革命に始まった政治的激動において、各国の長期独裁政権の崩壊が現実のものになると、指導者たちの亡命が噂されるよう になった。チュニジアのベンアリは早々と亡命、リビアのカダフィ大佐は亡命の噂をかき消すのに躍起になった。一方、東南アジアの長期政権崩壊時はどうで あったか。1998年スハルトが亡命するとは誰も考えなかった。1986年マルコスが亡命したのは必然と考えられた。こうした判断の違い、国民の受け止め 方の違いは極めて重要な政治的示唆がある。それは、各国政府の権力基盤がどれほど国際的なものなのかという点である。本研究会では、こうした政治指導者の 亡命について、多国間比較、そして時代比較を行うことによって、例えば東南アジアと米国、中国、日本といった域外大国との関係について、各国政府の国際的 権力基盤の政治的意味を、亡命という政治指導者の判断を題材に、裏から照射する。

期待される成果の第一は、政治指導者の亡命というこれまで誰も体系的に研 究してこなかった事象についての、詳細なデータベースの構築である。これによって、政治指導者の亡命判断はどのようにして行われるのか、またなぜ亡命が政 治的な選択肢に入るのか、について、広く理解を深める基盤を構築する。第二の成果は、亡命という軸で、歴史的に、政治指導者と国際機関や中、米、ソ、日、 英などの域外大国との関係は、当の政治指導者にどのように認識されてきたのかを明らかにする点にある。

本研究では指導者の亡命に注目することで、権力の崩 壊過程を考える新たな視点を提示するものである。

 

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