都市誌の可能性を探る ──ヤンゴン、バンコク、コロンボを事例とした総合的地域研究の模索と比較の試み──

研究代表者:長田 紀之(日本貿易振興機構アジア経済研究所・地域研究センター動向分析研究グループ)
共同研究者:藏本 龍介(東京大学・大学院総合文化研究科)
      中西 嘉宏(京都大学・東南アジア研究所)
      遠藤 環(埼玉大学・経済学部)
      山田 協太(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
      日向 伸介(京都大学・人文科学研究所)

実施期間:2014-2015

  
研究概要:

ヤンゴンの街並み。スーレー・パゴダを中心に碁盤目状のレイアウト。

ヤンゴンの街並み。スーレー・パゴダを中心に碁盤目状のレイアウト。

  総合的地域研究の実践の1 つとして、都市誌の可能性を模索する。個別の建物の形態、街路や街区の景観、そこに住む人間の生活実践やそれらの歴史的変化に関する厚い記述から、当該都市の社会像を浮かび上がらせることは可能だろうか。環ベンガル湾地域の3 都市──ヤンゴン、バンコク、コロンボ──をフィールドとする多分野の若手研究者による議論の場を設け、総合的な共同研究の可能性や比較の視座の取り方などについて検討する。

 
 
詳細:

ヤンゴンの日常風景。路上市場。

ヤンゴンの日常風景。路上市場。

 いまや都市社会への理解を深めることが、より広い地域社会を理解するうえで必要不可欠である。本研究では、都市を対象とする総合的地域研究の試みとして、都市誌の可能性を模索する。ここでの都市誌とは、様々な局面における都市空間と人々の生活実践との相互作用を克明に記すことで、都市の社会像を多角的かつ総合的に浮かび上がらせるような記述を指す。そのような記述には、学際的な視点が必要となる。日本の東南アジア研究で培われてきたインターディシプリンの複数研究者による共同研究という伝統は、都市理解の方法を考え、実践するのにも活かせるのではなかろうか。

そこで本研究では、歴史学、人類学、政治学、経済学、都市工学・建築史学という異なる学問的背景をもつ若手研究者による議論の場を設け、関連する諸分野の先行研究を整理しつつ、都市誌の取りうるべきいくつかの方向性を見出す。そして、それらの方向性のいずれかに沿うかたちで、各参加者がフィールドとするヤンゴン、バンコク、コロンボを対象に、都市誌を生み出す共同研究について、具体的なプロジェクトの立案を試みる。

また、環ベンガル湾地域に位置し、上座仏教徒が多数派を占める国家の中心都市であるというこれら3 都市の共通項を踏まえつつ、参加者同士の議論を通じて、都市間比較の視座を提示する。都市誌の具体的な位相にこだわる綿密な叙述は、それ自体、高い資料的価値を備え、都市間の比較研究に資することになろう。

  
  

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