ポル・ポト時代のカンボジアでは、170万人ともいわれる人が亡くなりました。極端な全体主義の下、飢餓などに加え、粛清殺人が蔓延した結果です。知識人の家に生まれ、その時代を生き抜いたリティ・パニュは、20年余の時を経て、当時政治犯収容所の所長を務め多くの殺人を指示した人物と向き合い、対話を重ねます。そして、その時代に家族が死なねばならなかった理由を問い質します。パニュは国際的に著名なドキュメンタリー作家であり、最新作に『消えた画』があります。愛する人を失った苦悩を背負い続ける姿が、胸を打ちます。今年出会った本のなかで一押しの一冊です。