最後は自分の本を挙げさせていただきます。内戦とポル・ポト時代、そしてその後の社会主義政府の下、カンボジアは1970年から四半世紀にわたって国際的に孤立していました。そのため、社会が被った混乱と悲劇の大きさは知られていたものの、具体的な事実は明らかでありませんでした。本書は、筆者が2000年前後に農村でおこなった長期の住み込み調査にもとづき、地域社会の過去と現在を繋ぐ歴史動態を明らかにしようとしています。フィールドワークによって、机上の原理ではなく、現場の本質を捉えようとしています。上座仏教を信じ、月の満ち欠けがリズムを刻むカンボジア農村の人々の日常生活を知る上でも役に立つと思います。