IV-5.「農村社会構造の広域アジア間比較──地域社会と国家権力、開発政策の相互規定性」(平成22年度 FY2010 新規)


  • 研究代表者:柳澤雅之(京都大学・地域研究統合情報センター)
  • 共同研究者:松本武祝(東京大学・大学院農学生命科学研究科)
  • 樋渡雅人(北海道大学・大学院経済学研究科)
  • 大鎌邦雄(東北大学・名誉教授)
  • 坂下明彦(北海道大学・大学院農学研究院)
  • 厳 善平(桃山学院大学・経済学部)
  • 大野昭彦(青山学院大学・国際政治経済学部)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア研究所)
  • 生方史数(岡山大学・大学院環境学研究科)
  • 水野広祐(京都大学・東南アジア研究所)
  • 加治佐 敬(財団法人国際開発高等教育機構)
  • 藤田幸一(京都大学・東南アジア研究所)

研究概要

東アジア(日本、朝鮮、中国)から東南アジア(ベトナム、カンボジア、タイ、フィリピン、インドネシア)、南アジア(北インド、南インド)、中央アジア(ウズベキスタン)に至る広域アジアの農村社会構造を、その歴史的形成過程を踏まえつつ、比較論的に明らかにする。特に、さまざまなアクターが関係する、具体的な農業・農村開発政策や開発事業に着目し、それらの検討を通じて、各地域固有の農村社会構造の特徴とその変化を浮かび上がらせる。

詳細

アジアの農村社会は、多様な「原型」を基盤としつつ、近年の経済発展に伴い、大きな変動を経験している。東アジアでは、近世に成立した「小農社会」(小農による強固な村コミュニティ)が原型となり、それが勤労精神や企業内組織の在り方にまで影響し、地域固有の発展パターンを生み出してきた。南アジアでは、「原型」としてのカーストに基づく職分制社会が、近年の都市化・工業化の中でその帰趨が注目されている。また東南アジアは、両文明圏のはざまにあって、小人口社会に特徴的なオープンな農村社会を形成してきたが、近年の地方分権化等、新しい動きの中でコミュニティ機能に一定の変質がみられる。以上のような、それぞれに個性をもつアジアの農村社会は、都市化・工業化、急速に進む少子高齢化といった、かなり共通の現代的課題に直面している。その中で、各地域の農村社会が歴史的に形成されたそれぞれの「原型」を基本としつつ、いかなる変容を遂げていくのか、本研究は、広域アジアの地域間比較という視点の導入を通じて、アジア農村比較社会論を打ち立てようという野心をもっている。

本研究は、実質的に過去1 年半行ってきた共同研究の継続研究であり、2 年後の終了時には、まとまった形で成果を出し、世に問いたいと考えている。

 


灌漑施設の共同管理に関する水利組合への聞き取り、フィリピン、ボホール

近年修復された後に再び崩壊したポル・ポト水路。水路が作られても地元住民の管理は不在であり、受益者の組織化が必要になっている。