- 研究代表者:相沢伸広(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
- 共同研究者:岡本正明(京都大学・東南アジア研究所)
- 宮城大蔵(上智大学・グローバルスタディーズ研究科)
- 町北朋洋(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
- 山尾 大(九州大学・大学院比較社会文化研究院)
- 日向俊介(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
- 小島敬裕(京都大学・地域研究統合情報センター)
研究概要
本研究会では、政治指導者の亡命判断にある政治的背景とそこから明らかになる政権の国際的基盤を解明する。植民地期以降の代表的な政治変動において、国王や大統領、首相の亡命事案、そして亡命しなかった事案データを収集し、亡命という政治判断がどのようになされてきたのかを、東南アジアを中心としてアジア全域で明らかにする。その結果、各国政府の国際的権力基盤が、国家形成、権力維持、体制崩壊といった政治的節目でどのような重要度をもっているのかを分析する新たな視座を提示する。
詳細
2011 年、チュニジアのジャスミン革命に始まった政治的激動において、長期独裁政権を築いていた各国の指導者たちはいよいよ政権崩壊が現実のものになると、亡命の是非が噂されるようになった。一方、東南アジアでは、1998 年スハルトが亡命するとは誰も考えなかった。1986 年マルコスが亡命したのは必然と考えられた。タイの現国王がどれほどの政治的圧力を受けたとしても、亡命するとは誰も考えないだろう。こうした判断の違い、国民の受け止め方の違いには極めて重要な政治的示唆がある。それは、各国の政権基盤がどれほど国際的なものなのかという点である。本研究会では、こうした政治指導者の亡命について、多国間比較、そして時代比較を行うことによって、例えば東南アジアと米国、中国、日本といった域外大国との関係について、各国政府の国際的権力基盤の政治的意味を、亡命という政治指導者の判断を題材に、裏から照射する。
政治亡命の研究は、これまで主に反体制派の研究に焦点をあててきた。数少ない例外が、マルコス研究、李承晩研究といった特定の政治指導者研究であるが、広く体制変動と政治亡命について指導者の亡命に注目した研究はない。従来の国内政治分析も、国内の政治勢力の支持動向については詳しいが、国際的な支持・不支持が、権力の誕生、維持、崩壊それぞれの局面でどのような役割を持ったのかについて、体系的に研究してこなかった。そうした背景から、本研究会は亡命という極めて重要な政治判断についての新たな視点を提示するものである。
ハワイに亡命中のマルコス元フィリピン大統領。1986年2月、エドゥサ革命後、ハワイへ亡命 |
ドバイにて事実上の亡命生活を送るタクシン元タイ首相。2006年クーデタにより政権を追われその後、UAE他にて亡命生活 |