- 研究代表者:祖田亮次(大阪市立大学・大学院文学研究科)
- 共同研究者:藤田素子(京都大学・東南アジア研究所)
- 生方史数(岡山大学・大学院環境学研究科)
- 遠藤 環(埼玉大学・経済学部)
- 鮫島弘光(京都大学・東南アジア研究所)
- 定道有頂(産業技術総合研究所・安全科学研究部門)
- 石川 登(京都大学・東南アジア研究所)
研究概要
本研究では、東南アジアの生物資源から生み出される諸産物の商品連鎖分析を通して、生産地(川上)と消費地(川下)を結ぶ社会・経済・文化・生態関係を実証的に検討し、熱帯バイオマスと人々の関係性をローカルからグローバルにいたる諸レベルで考察する。具体的な対象として、木材および哺乳類・鳥類を含む森林由来産物や、アブラヤシ・アカシア等の植栽農林産物の生産・加工・流通・消費プロセスに注目し、ケース・スタディを分野横断的に蓄積する。そして、人間による自然資源利用という観点から、それらの個別事例を総合的に把握するためのマルチ・スケールの研究方法を見出す。
詳細
本研究の目的は、熱帯バイオマスに依存した商品の「高生産性」に注目しつつ、生産から消費に至るローカル/グローバルなプロセスを、時間的・空間的に多様なスケールから検討することで、新しい人間-環境関係論を構築する点にある。商品連鎖の研究については、社会学や経済学における蓄積があるが、本研究では、より生態学的・工学的・人文学的な観点を交えながら、人々の自然資源利用のあり方をより多方面から解明する。
熱帯バイオマスの商品化プロセスの考察にあたっては、生態学・経済学・人類学・国際政治学など、それぞれの学問分野が得意とする分析のスケールおよび対象がある。具体的なスケール・対象としては、ローカル(例えば獣肉や山菜類)、リージョナル(例えばツバメの巣や香木)、グローバル(例えば木材やアブラヤシ)等が想定される。
本研究の意義は、各分野の研究者が、熱帯由来の商品連鎖を考える上で最も有効な空間的あるいは歴史的な分析単位を提示した上で、地理学や歴史学の手法を通じて、異なる時空間スケールの連結や包摂を試みるという、従来にない文理融合型の方法論を創出しようとする点にある。
このように、熱帯バイオマス商品の地域的・国際的フローのメカニズムを多方面から追い、地域と地域をつなぐ具体的な関係性を抽出した上で、分野横断的な議論を通じて理論化を進めることによって、従来の地域特定的な「地域研究」から脱却し、熱帯環境を基軸とした「脱領域的地域研究」の可能性を見出しうると期待できる。
内陸の市場町。野生動物の販売は現在では法律で禁止されているが、内陸の一部地域ではローカルに流通している。 |
国境の貯木場。インドネシア・カリマンタンで伐採された木材が、国境を越えマレーシア・サラワクへ、そして日本をはじめとする各国へ輸出されていく。 |