I-3.「メコン流域圏における農林産物リソース・チェーンと土地利用変化の解明」(平成24年度 FY2012 新規)


  • 研究代表者:横山 智(名古屋大学・環境学研究科)
  • 共同研究者:河野泰之(京都大学・東南アジア研究所)
  • 富田晋介(京都大学・東南アジア研究所)
  • 東城文柄(総合地球環境学研究所・研究部)
  • Maniemai Thongyou(コンケーン大学・メコン流域多元性研究所)

研究概要

メコン流域の国々において、近年のグローバル化の影響で急激に面積を拡大させている農産物や植林事業による土地利用変化に着目し、その変化要因となっている農林産物の背後にある様々な関係性を明らかにすることを目的にする。研究対象地域はタイ、ラオス、カンボジアとし、農作物としてサトウキビ、植林木としてパラゴムを取り上げ、それらの導入に伴う土地利用変化、およびリソース・チェーンの解明を行う。

研究目的

メコン流域の国々では、地域外部の需要で導入されている様々な農林産物が、急激な土地利用変化を引き起こしている。しかし、それら農林産物が人びとの生活、地域社会、そして自然生態系など、総合的な視点からどのような影響を与えているのかは決して明らかになっていない。本研究では、タイ、ラオス、カンボジアのメコン流域の3 カ国で近年のグローバル化の影響で急激に面積を拡大させている農林産物導入による土地利用変化に着目し、その背後にある様々な関係性(本研究では、リソース・チェーンと称する)を明らかにすることを目的にする。

研究の意義

メコン流域の国家・コミュニティ・個人が新しい何かと対峙した時、いかなる基準でどのような対応をしてきたのであろうか?

地域独自の生存戦略が存在しているはずであり、常に先進国の支配や侵略、中国ヘゲモニーに屈しているわけではない。本研究では、農産物や植林事業の導入を事例にして、新しい農林産物の導入に対する人々の対応プロセスから土地利用と資源利用の変化を促している原動力と要因の解明に挑み、持続的な土地利用を導く点に研究の独自性と意義を見いだすことができる。

期待される効果

本研究によって、以下の2点の成果が期待される。
( 1 )リソース・チェーンを解明することによって、今後、何が新しく生み出され、何が失われるか、生態系と社会環境の両方の変化を予測することが可能となる。
( 2 )外部から導入された作物や植林木による土地利用変化と地域社会変化の解明によって、土地資源・農作物流通・農作物消費に関するガバナンス・国家規制への提言が可能となり、自らの土地資源を自ら管理し、自ら持続的に利用する筋道を導くことに貢献することが期待される。


ラオス北部山地部の中国輸出向け組織培養バナナ栽培

ラオス南部におけるタブノキ(Machilus spp.)植林地での樹幹投影図の作成。この数年、線香粘結剤として使われるタブノキの植林面積がラオスでは急増している。全量が近隣国に輸出され、その後、一部は日本に売られる。