IV-12.「ムラピ山における大規模噴火後の景観復興過程」(平成24年度 FY2012 新規)


  • 研究代表者:嶋村鉄也(愛媛大学・農学部)
  • 共同研究者:市川昌広(高知大学・農学部)
  • 甲山 治(京都大学・東南アジア研究所)
  • 伊藤雅之(京都大学・東南アジア研究所)

研究概要

本研究は2010年に大規模噴火を起こしたインドネシア・ジャワ島にあるムラピ山における一次遷移と景観の回復過程を追跡し、今後の熱帯域における災害復興と環境利用のあり方を提示するものである。本研究では、国立公園とその周囲の住民による限定的利用が認められたバッファーゾーン、住民による耕作地、屋敷林における住民の生業および、土地利用、資源利用様式、植生回復などの調査を行い、繰り返されて来た大規模撹乱に対して住民がどのように対応してきたかを解明する。

研究目的

本研究はムラピ山における一次遷移と景観の回復過程を追跡し、今後の熱帯域における環境利用のあり方を提示することを目的とする。現在のムラピ山では、(1) 天然更新を促進する国立公園内のコアゾーン、(2) 限定的に住民利用を認めたバッファーゾーン、(3) 住民による耕作地、(4) 屋敷林などが代表的景観として確認されている。2010 年の大規模噴火により打撃を受けた、これらの景観における住民の生業および土地利用、復興に向けた習慣・制度の解明、物質循環などの調査を行い、学際的な視点から統合し、その景観の回復過程を明らかにし、ムラピ山における復興型の資源利用方式を提示する。

研究の意義・期待される効果

ムラピ山では4 ~ 5年間隔で噴火がおき、その景観は大規模撹乱をうける。この撹乱に対して住民はその環境に対する深い造詣を活用し、復興を成し遂げてきた。このような高頻度の撹乱を克服し続けてきた、ムラピ山における住民の生業は、今後の熱帯域における環境の利用法として技術的にも、社会システム的にも重要な示唆を含むものである。このシステムを解明するところに本研究の意義がある。

今後の資源利用のあり方は、人類が抱える大きな課題である。本研究では、ムラピ山の復興過程を「強度の撹乱に対してもその機能を失わない資源利用システム」と位置づけ、それを科学的に解明する。例えば、技術的には自然の復元力の活かし方を植生遷移・物質循環系の解明により明らかにし、復興に向けた制度・習慣を明らかにする。これにより、天然資源の復元力を活かした資源利用システムの構築に向けた有効な知見を得ることが期待される。


土石流の跡地。かつてはこの下に村があった。

噴火時の高温のガスによって立ち枯れた樹木

避難民の村で行われている魚の養殖