- 研究代表者:吉川みな子(京都大学・学際融合教育研究推進センター グローバル生存学大学院連携ユニット)
- 共同研究者:Rita Kusriastui(インドネシア保健省・昆虫媒介性疾患予防部門)
- 西渕光昭(京都大学・東南アジア研究所)
- Agus Suwandono(インドネシア保健省・バイオメディックおよび基礎研究技術センター)
研究概要
蚊媒介性感染症のデング熱・デング出血熱およびチクングニア熱が、東南アジアをはじめとする熱帯地域で猛威を奮い、人々の生命と健康への脅威となるとともに社会的・経済的な負担となっている。本萌芽研究は、日本における2010 年のデングウイルス輸入感染症の推定感染地の3 割強を占めたインドネシア共和国に焦点をあて、都市ジャカルタおよび観光地バリなどの地域が直面していると考えられる、迅速な感染症情報伝達の課題の克服に取り組む。
詳細
本研究の目的は、迅速かつ適切な感染症情報の発信方法を考案し、地域住民および渡航者の予防に関する知識普及の改善に寄与することである。グローバル化に伴い、これらの感染症の発生と伝播および境域を越えての感染症の拡大に関与している渡航者の役割が注目され始めている。越境する感染症の予防には渡航者への教育・情報普及が欠かせないが、渡航者が出発国において得られる感染症情報は、限定的となりがちである。本萌芽研究はこの公衆衛生上重要な注意情報の不足という状況に一石を投じるべく、現地調査にもとづき地域の事情を勘案した情報伝達方法を提示する。
近年、輸入感染症に起因したデング熱およびチクングニア熱の国内事例が世界各地より報告されている。媒介蚊が分布する日本にとり東南アジアは身近な渡航先である。これら感染症の日本到来の遅延および、インドネシアにおけるより良い公衆衛生環境の整備を目指し日-イ両国の研究者らが本研究を遂行することは、有意義である。熱帯性気候下の観光地や都市にとり、蚊媒介性感染症の長期的な流行は、国際的な信頼性の低下につながるリスク要因である。結果として現地の社会や経済への悪影響が避けられなくなる可能性もある。流行地における渡航者への情報普及を図る本研究は、迅速かつ正確な情報伝達により予防対策の強化に寄与し、他の感染症対策への波及効果も期待できる。
インドネシア保健省発行の「疾病予防と環境衛生 2008年版」 |
インドネシアバリ島の旅行者向けホテルでの薬剤噴霧。 |