IV-9.「文化遺産情報のシステム化とオントロジー構造によるLocal Knowledgeの理解」(平成24年度 FY2012 新規)


  • 研究代表者:津村宏臣(同志社大学・文化情報学部)
  • 共同研究者:柴山 守(京都大学・地球研究統合情報センター)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア研究所)
  • 田代亜紀子(奈良文化財研究所・企画調整部)
  • 高田祐一(同志社大学・文化遺産情報科学センター)

研究概要

本研究では、11 世紀以降ベトナム諸王朝の中心都市でありつづけたハノイについて、その歴史都市景観に関する時空間的な情報基盤をGIS を基本とした時空間情報科学の方法と技術によって構築し、情報相互のオントロジー構造を基盤とした新しい文化景観研究を推進することを目的とする。具体的には、まず国土座標系が不詳の現状の歴史地図類のアーカイブと補正を実施し、累積する都市構造の時系列での変遷を定量的に評価することから始め、その傾向と法則性から歴史文化の理解を進める。

詳細

世界遺産として登録されているタンロン遺跡は、現在も発掘調査が継続的に進められている。これらの情報に合わせ、文献あるいは古地図類の多様な情報が、現状では有機的に結びついて文化景観を紡ぎ出す状況には至っていない。本研究では、発掘調査成果だけでなく多様な時空間情報を一つの情報基盤(STIS)に格納し建造物配置と都市構造の時系列変遷について明確にする。次いで、文献調査を実施し、併せて発掘調査成果からそれらの事実の確認を行い、その相互の関連を評価する。現代のフランス統治下における都市計画と歴史景観を総合評価し、ハノイ都市形成史を考察することを目的とする。また、ベトナムの国土情報基盤の混乱の改善のため、現地機関と連携し、衛星画像も含めた空間情報拠点をCSEAS に設けることも目的である。

本研究の実施により、従来歴史研究者によって対象とされた時代の静的な文化景観把握にとどまっていたハノイ都市形成史の記述から、動的な歴史景観の再構築とそのメカニズムの把握が可能な一つの時空間情報基盤が確立することが可能となる。

本研究の結果、(1)11世紀から現代に至るまでの、ハノイの古地図・絵図・文献資料などに関する統合情報基盤が構築され、(2)公開可能なWebGIS の形で情報基盤をCSEAS に構築することができる。これを利用して、(3)タンロン遺跡を中心とした歴史環境変遷について定量的な評価を実施し、(4)その歴史・文化的な背景について考察を可能とする。また、(5)新規の現地測量調査を実施することで、都市構造評価のための軸線評価を可能とし、9世紀以降の東アジア全体の都市形成史との比較文化研究に大いに資することが予測される。


ハノイ市街域のGIS アーカイブデータ

システム構成図

DGPS 基準点測量調査