II-1. 「東西文化回廊研究:ミャンマーからタイ・カンボジアを中心に」(平成24-25年度 FY2012-2013 継続)


  • 研究代表者:柴山 守(京都大学・地域研究統合情報センター)
  • 共同研究者:Surat Lertlum(チュラチョムクラオ・タイ王国軍大学校・コンピュータ学科)
  • Elizabeth Howard Moore(ロンドン大学・東洋アフリカ学研究所)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア研究所)
  • 松浦史明(上智大学・アジア文化研究所)

研究概要

大陸部東南アジアにおける仏教文化の伝播において地域の固有性と文化圏としての特性にみる類似性、および東西回廊の全体像を、交易や文化ネットワークに関する史実やこれまでに入手不可能であったミャンマー当局から提供される考古資料等とフィールド調査による検証を伴って明らかにする。本研究では、特にミャンマー考古局から提供される未公開資料にもとづく調査と東西回廊関連研究をリンクし、ミャンマーからタイ、カンボジアに至る仏教伝播と文化圏の態様を明らかにする。

詳細

本研究は、仏教文化の伝播において地域の固有性と広域の文化圏としての特性にみる類似性、および東西回廊の全体像を明らかにするために、ミャンマー国文化省考古局による未公開にある発掘調査報告資料(2005~2011)やタイ国文化省芸術局の全土遺跡資料にもとづいて、ミャンマーに散在する遺跡からタイ国に至る地域の鉄器、壁画、遺物等の考古資料から仏教伝播に関する道路、河川、交易など伝播ルートに注目した比較検討と検証を行う。また、タイ、カンボジアにおける東西回廊学説と関連して、Dawei、Tanintharyi、南東部のミャンマーの遺蹟資料との比較検討を行い、Daweiにおける海域あるいは島嶼間の政治的、経済的な関係のみならず仏教文化における儀式や仏教実践についても探究する。

本研究は、考古学、人類学、地理学やリモートセンシングなど地域情報学との学際研究として進める。そして、東西回廊に関係するマレーシアを含めたマッピングをCSEAS、SOAS(ロンドン大学)、CRMA(チュラチョムクラオ・タイ王国軍大学校)、CIAS(地域研究統合情報センター)の共同で進める。

本研究は、新たに提供されるミャンマー側からの資料で比較検討を容易にする。また、関連するケース・スタディから地理空間的な東西回廊の全容の解明に貢献する。これにより、地域固有の歴史に加えて、コミュニティ、生業、交易などの伝播ルートにおけるマッピングを行って、以前は公開されていなかった空間情報的な構造が明らかになる。また、ミャンマー国文化省との連携による今後の新たな学術交流の展開に極めて大きい意義がある。本研究は、文理融合とフィールド調査による学際的研究である。


タイ・カンボジア国境近くで発見された石像の調査(2013 年7 月20 日)

ミャンマー・ヤンゴン大学考古学科における「東西回廊」講義(2013 年7 月26 日)