- 研究代表者:瀬戸裕之(京都大学・東南アジア研究所)
- 共同研究者:河野泰之(京都大学・東南アジア研究所)
- 岩井美佐紀(神田外語大学・外国語学部アジア言語学科)
- 今村真央(シンガポール国立大学・地理学部)
- 西本 太(総合地球環境学研究所)
- 倉島孝行(森林総合研究所・森林管理研究領域)
- Bounthong Bouahom(ラオス国立農林業研究所)
- Linkham Douangsavanh(ラオス国立農林業研究所)
研究概要
本研究は、内陸部東南アジアを戦争、特にインドシナ戦争とヴェトナム戦争によって被害を受けた「被戦争社会」として捉え、戦争が地域の社会形成と環境の変化に与えた影響を考察することによって、東南アジアの社会形成を再考する。さらに、戦争被害によるリスクに対して人々がどのように対応し、新たなネットワークと生業を形成したかを考察することによって、地域住民の耐久能力(レジリエンス)を明らかにする。
詳細
本研究の目的は、内陸部東南アジアの社会形成について、戦争の影響と住民の耐久能力(レジリエンス)という視点から再考することである。
研究意義は、第1 に、内陸部東南アジアの社会形成の特徴を、戦争の影響という視点から再考することである。従来、内陸部東南アジアの社会変化は、自然経済から商品経済への移行過程として捉えられることが多かった。しかし、1960 年代、1970 年代に行われた近代戦争(インドシナ戦争、ヴェトナム戦争)は、山地部に居住する住民の移住を引き起こし、移住先での生業と自然環境に変化を与えた。さらに、海外に亡命した家族とのネットワークが、紛争後に新たな生業を生み出しつつあり、戦争が東南アジアの社会変化に与えた影響は大きいと考える。
第2 に、戦争によって移住した住民たちの生業変化を考察することで、現在の災害・移住によって生じるリスクに対する住民の耐久能力と条件を明らかにすることである。戦争によって村を離れた住民たちは、新しい環境の中で、政府からの支援、土地の開墾、林産物の利用、周辺の村との協力、親族のネットワークにより生存を維持しようと努めた。その経験から、天災、開発によって移住せざるを得ない住民たちに対する対応(ケアー)について明らかにできる。
本研究で期待される成果は、「被戦争社会」の経験から内陸部東南アジアの固有性を明らかにし、さらに災害・移住によるリスクへの対応について提言することである。
2012 年11 月の予備調査団メンバーとラオス国立農林業研究所長のブントーン氏 |
ラオスの内戦期に移住させられたHP 村 |