IV-9. 「教育・研究交流を通じた東アジアにおける産官学ネットワークの社会的影響の評価:東方政策の30年を振り返って」(平成24-25年度 FY2012-2013 継続)


  • 研究代表者:金子芳樹(獨協大学・外国語学部)
  • 共同研究者:穴沢 眞(小樽商科大学・商学部)
  • 石川 登(京都大学・東南アジア研究所)
  • 黒田景子(鹿児島大学・法文学部)
  • 田村慶子(北九州市立大学・大学院社会システム研究科)
  • 多和田裕司(公立大学法人大阪市立大学・大学院文学研究科)
  • 富沢寿勇(静岡県立大学・国際関係学部)
  • 舛谷 鋭(立教大学・観光学部)
  • 吉村真子(法政大学・社会学部)
  • 山本博之(京都大学・地域研究統合情報センター)
  • 川端隆史(東京外国語大学・アジア・アフリカ言語文化研究所)
  • 塩﨑悠輝(同志社大学・神学部)
  • 鈴木絢女(福岡女子大学・国際文理学部)
  • 小野真由美(千葉大学・国際教育センター)
  • Nasrudin Akhir(マラヤ大学・東アジア研究科)
  • Alias bin Abdullah(マラヤ大学・東アジア研究科)
  • Asmadi Hassan(マラヤ大学・東アジア研究科)

研究概要

本研究では、留学や技術研修、研究者の派遣・招聘、国際学会の開催といった国際的な教育・研究交流が広域の産官学ネットワークの形成に与える影響を検討する。具体的には、1982 年に開始されたマレーシアの東方政策(ルックイースト政策)を取り上げ、日本・韓国の集団主義と勤労倫理を学ぶための留学生派遣事業が30 年を経過して東アジアの産官学ネットワークにどのような影響を与えたかを評価する。実施に当たっては、日本外務省を通じてマレーシア政府の協力を仰ぎ、研究成果公表に際しては政策当局者への政策提言を行う。

詳細

マレーシアが1982 年に開始した東方政策は、集団主義や勤労倫理をはじめとする北東アジア社会の諸価値に学ぶことでマレーシアの経済発展をめざすものであり、これまでに東方政策のもとで1万3000 人に上るマレーシア人が留学や産業技術研修のために日本に派遣された。本研究では、30 年にわたって国策として進められてきた留学生派遣事業がマレーシアと日本、ひいては東南アジアを含む東アジア地域における産官学ネットワークにどのような影響を及ぼしたかを検討する。30 年を経てマレーシアは経済発展を遂げ、「開発途上国が先進国に学ぶ」という東方政策の意義が変容しつつあるが、マレーシア政府は今後も東方政策を継続する方針である。本研究では、東方政策の意義が変質しつつあるこのような状況にも着目し、マレーシアにとっての東方政策の意義や、東方政策の継続的な実施を可能にしたマレーシア社会の背景や国際情勢についても考察する。東方政策の評価を通じて、国際的な教育・研究交流の促進が社会にどのような影響を及ぼすかについても検討し、日本・マレーシアの政策担当者への政策的なインプリケーションの発信もあわせて行う。

30 年間にわたって実施され、国際的な教育・研究交流の促進事業として、(1)留学先を特定国に限定している、(2)勤労倫理のような社会規範や価値の体得を目標に掲げている、(3)留学と産業技術研修を組み合わせているといった特徴をもつ東方政策を評価することで、国際的な教育・研究交流の促進が社会に与えるインパクトについて実証的に明らかにすることができる。また、本研究の実施自体がマレーシアと日本の教育・研究交流の促進につながるとともに、地域研究者による研究対象国への政策提言のあり方を検討することにもつながる。


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