- 研究代表者:山本博之(京都大学・地域研究統合情報センター)
- 共同研究者:清水 展(京都大学・東南アジア研究所)
- 高木美智代(特定非営利活動法人JIPPO・事務局)
- 細田尚美(香川大学・インターナショナルオフィス)
- 日下 渉(名古屋大学・大学院国際開発研究科)
研究概要
2013 年11 月にフィリピン中部地方を襲った台風30 号(フィリピン名ヨランダ)の被災地であるサマール島とレイテ島を主な対象に、フィリピン地域研究者、災害対応研究者、復興支援実務者が合同で救援・復興過程を参与観察し、台風ヨランダからの復興過程を中長期的に多面的に記録するとともに、災害対応を通じてフィリピン社会が潜在的に抱える課題にどのように対応するかを明らかにする。
詳細
災害は日常から切り離された特殊な時間ではなく、被災前の社会が抱えていた潜在的な課題が露になる点で日常の延長にある。同時に、災害は地域社会の外部から救援・復興の手が差し伸べられ、平時と異なる対応が可能となる点で、被災前の社会の課題を解決する契機ともなる。本研究では、台風ヨランダへの対応過程で、地方政府が発信する災害地域情報への関心の高まりや地方政府間の連携の取り組みがフィリピン社会に生まれつつあることに着目して、災害対応分野における地方政府の役割を見直す。さらに、従来の災害対応と同様に、政府の支援に期待せずに自助や共助による復興を促す動きがある一方で、台風ヨランダ後には私企業、教会、国内外の支援団体、政府の連携を強化する動きがあることに注目し、フィリピン社会に新たな公と私が創出される可能性とその課題を探る。これにより、私企業や教会が社会基盤を支え、政府が弱いと言われてきたフィリピンにおいて、災害対応を通じて政府の役割が強められ、新しい公と私を創出することができるのかという課題を検討する。本共同研究では、異業種・異分野の専門家に対してフィリピン社会の特徴を各業種・分野の実践に応用しやすい形で提示する工夫を通じて、東南アジア地域研究者が異業種・異分野による現地調査の仲介者となるために必要な道具立てや手順を整理することも試みる。フィリピンの災害対応を事例とするが、他の東南アジア地域の災害対応以外の事例への適用可能性を探る基礎となることが期待される。
台風ヨランダにより約110 万棟の家屋が被害を受け、約410 万人が避難民となった。 |
サマール島とレイテ島では台風ヨランダによって約250 万本のココ椰子が被害を受けた。 |