I-1.「メコンオオナマズの保全に関する国際共同研究」(平成26-27年度 FY2014-2015 継続)


  • 研究代表者:光永 靖(近畿大学・農学部)
  • 共同研究者:Thavee Viputhanumas(タイ国水産局・内水面水産部)
  • Boonsong Richaroendham(タイ国水産局・内水面水産部)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア研究所)
  • 荒井修亮(京都大学・フィールド科学教育研究センター)
  • 三田村啓理(京都大学・情報学研究科)

研究概要

本研究の目的は、タイ国水産局によって生産されたメコンオオナマズを湖に放流した際の移動を明らかにし、適切な放流密度、放流場所、放流時期など、本種の放流技術に資する知見を得ることである。具体的には、メコンオオナマズに超音波発信機を装着して、タイ国ケンクラチャン湖に放流する。放流後、精密測位バイオテレメトリー(水平精度 10m 程度)を用いて放流個体の移動をモニタリングする。

研究目的

メコンオオナマズはメコン川流域の固有種で、体長3m、体重300㎏に達する世界最大級の淡水魚である。本種はメコン川流域における重要な水産資源であるが、ワシントン条約附属書I掲載種で絶滅が危惧されている。タイ国水産局は、本種の人工授精技術の開発に取り組み、1983年に稚魚の生産に成功して、タイ国内のダム湖に放流している。

本研究では、メコンオオナマズ人工種苗の放流後の移動について、精密測位バイオテレメトリーを用いて、タイ国ペッチャブリー県ケンクラチャン湖において定量的に明らかにする。

意義

タイ国水産局では、本種の行動や生態の解明を喫緊の課題と位置づけ、「King’s Project」として国を挙げて本種保護ならびに資源回復策が推進されている。こうした背景のもと、「日本・タイ共同メコンオオナマズ追跡プロジェクト」は、タイ国水産局の要請に基づいて本種の行動や生態を解明するべく始まった。本研究により、絶滅が危惧されているメコンオオナマズの放流技術に生物学的な根拠を与えられる。

期待される効果

本種の人工種苗の放流によってメコン川流域における資源の増殖と回復に資する。また、古来より地域社会の象徴である本種の研究をすすめることで文化の維持にも資する。


メコンオオナマズの漁獲を喜ぶケンクラチャン湖の子供たち

スコールが過ぎ去った後の澄んだ空気と夕焼け