I-1.「インドネシアにおける中間層的消費の拡大に関する研究」(平成27-28年度 FY2015-2016 継続)


  • 研究代表者:倉沢愛子(慶應義塾大学・名誉教授)
  • 共同研究者:水野広祐(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      内藤 耕(東海大学・文学部)
  •                      新井和広(慶應義塾大学・商学部)
  •                      新井健一郎(亜細亜大学・都市創造学部)
  •                      野中 葉(慶應義塾大学・総合政策学部)
  •                      大井慈郎(東北大学・大学院文学研究科)
  •                      松村智夫(早稲田大学・アジア太平洋研究科)
  •                      山口元樹(立教大学・文学部)
  •                      南家三津子(岡山大学・社会文化研究科)

研究概要

本プロジェクトでは、中間層的消費スタイルが広がりつつあるインドネシアにおいて、擬似中間層という分析概念を措定し、その消費行動の特徴をフィールド調査に力点をおいて研究する。同時に、イスラーム関連商品など近年の消費動向に特徴的な商品をとりあげ、それらの需要と供給の様相についても探求していく。今年度は全員がインドネシアに行き、主としてショッピングモールにおける消費者行動、ライフスタイルへの影響について調査する。

詳細

一般に消費を支えるといわれる中間層は、インドネシアではまだ十分に形成されているとは言い難い。本研究においては、収入規模から見て実際には十分な購買力を伴わないが、消費行動や価値観などにおいて新中間層に類似している人々が実際の消費を牽引しているとの仮説に立ち、こうした階層を「疑似中間層」と名付けて分析の基本概念とする。擬似中間層に属すると考えられる人々の意識や価値観をミクロなレベルで具体的に明らかにすべく、かれらの消費行動の現状に関するフィールド調査を実施する。同時に、いくつかの商品やサービスの需要と供給の様相についても探究していく。特に、世界最大のムスリム人口を抱える社会であることに着眼し、イスラーム的価値観との関連での調査に力点をおく。グローカルな問題意識に基づいて、イスラーム的消費も含め消費スタイルのグローバルな変容がコミュニティレベルにどのような影響を与えているか、明らかにしていく。今年度はショッピングモールに焦点を当て、さまざまなレベル(超?高級、高級、中級など)のモールが、多様なニーズに合わせて出現していることを踏まえて、それぞれを例にとって分析する。

 


海外出稼ぎ労働者からの送金により建設された、ひさし飾りとタイル張りの家(左)。東ジャワ農村の人々が海外出稼ぎを決意する最大の理由は、レンガ造りの「永久家屋」を建設する資金獲得のためである。家内外の装飾は、近所の評判や流行を意識して決められるのが常である。客間の室内装飾には、海外出稼ぎ先で培った中間層の生活スタイルに対する、独自のイメージが強く反映されている(右)。内壁や外壁の仕上げに用いられる浴室用や床用タイルは、装飾のみならず壁表面の保護も兼ねている。

家電店でドラム式洗濯機の説明を受ける若い主婦たち(東ジャワ農村、郡中心部)。農村部では衣服を手洗いする習慣が根強いが、洗濯機を所有する家庭は増加傾向にあり、既に60% 以上に達するといわれる。

高校の下校風景(東ジャワ農村部)。警察当局は教育普及の重要性を考慮して、中高生の無免許運転を黙認しているのが現状である。高校の校庭は生徒のオートバイで埋め尽くされている。

西洋風カフェでソーダを楽しむ高校を終えたばかりの若者たち(東ジャワ農村、郡中心部)。カフェの雰囲気作りのため、ウィスキーやブランデーの空瓶が壁の装飾の一部に見られるが、イスラムの信仰に従いアルコール飲料の提供は厳禁とされる。伝統的に男性客ばかりで占められる村内のカフェと異なり、学校帰りの女子中学生でも気軽に立ち寄り、ラーメンや飲み物を楽しめる場所でもある。