IV-7.「東南アジアにおける商業銀行セクターの地域横断的大変容の実態把握」(平成27-28年度 FY2015-2016 継続)


  • 研究代表者:濱田美紀(日本貿易振興機構アジア経済研究所・開発研究センター)
  • 共同研究者:猪口真大(立命館大学・経営学部)
  •                      金京拓司(神戸大学・経済学研究科)
  •                      清水 聡((株)日本総研・調査部)
  •                      三重野文晴(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      矢野 剛(京都大学・経済学研究科)
  •                      長岡慎介(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  •                      芦 宛雪(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

研究概要

2000 年代に入り大きく変化しつつあるASEAN 5カ国の商業銀行セクターの変容の実態について、各国の規制、主要行の動向、マクロ金融環境、ならびにこの変容の動向の背景となる現在の東南アジア経済の歴史的・地政学的な観点からの位置づけを重視しながら吟味する。

この地域の商業銀行部門は、従来外資規制のもとで、華人系の民間資本を主とする地場資本銀行と政府系商業銀行の対抗をひとつの特徴としてきたが、この15 年ほどの間に、政府系主導による寡占化、域内での相互展開、日系・アジア系銀行資本など大きな変容を遂げつつある。こうした商業銀行部門の変容の実態把握を行う。

詳細

アジア金融危機後の15 年間で、先行ASEAN 諸国のうちのいくつかの国は海外への投資国へと変容してきた。経営基盤を強化させてきた商業銀行セクターは、豊富な資金をもとに、国内での再編とASEAN 域内への相互展開を顕著にしている。シンガポール、マレーシアの一部銀行はASEAN 全域をカバーする大規模国際銀行へと変貌を遂げつつあり、インドネシアやタイではこうした域内外資、日・中国系外資の活動が盛んになってきている。一方で、ASEAN 地域の経済成長を牽引する輸出製造業の成長と銀行部門の成長の乖離は広まっている。これはASEAN 経済統合の機運ともあわせ、この地域の金融システムや経済システムが大きく変容しはじめていることを意味している可能性がある。本研究会では、そのような動きの実態を捉えることを目的とする。この研究会では、各国の実態把握を基礎に、地域全体の構図と論点の整理を行うことにより、ASEAN 地域固有の金融の論理が、今世紀のグローバル経済の進展とどのように関わりながら展開していくのかを探るための新しい視点を得ることができると期待される。地域研究と経済研究およびわが国のASEAN 研究にとって大きな意義を持つものである。

このテーマは、萌芽的な研究段階にあることから、本研究会では何よりも実態把握に注力する。初年度にはASEAN 地域で今後課題となりうるインフラファイナンスなどの問題について議論をし、タイ・インドネシアの個別国の現状をまとめ基礎的な情報整理を行なった。今年度は昨年度の議論を踏まえつつ各国の銀行セクターおよび主要行の現状や規制のあり方、マクロ経済と資本フローの特徴を、数値を基礎に整理する。また、来年度以降のアジア経済研究所や科研プロジェクトなどでの長期的な取り組みの可能性を探って行く。

 


インドネシア中央銀行

インドネシア・ジャカルタ市中商業銀行