- 研究代表者:坂本龍太(京都大学・東南アジア研究所)
- 共同研究者:松林公蔵(京都大学・東南アジア研究所・名誉教授)
- Jamtsho Yenten(ブータン王国保健省・医療サービス局)
- Tashi Phuntsho(ブータン王国保健省・医療サービス局)
- Yeshi Wangdi(ブータン王国保健省・医療サービス局)
研究概要
ブータン王国においてBasic Health Unit(BHU)や県保健局のスタッフを対象に地域高齢者ケアのための指導者養成研修を行う。研修では、保健省と共に作成したガイドライン“Guidelines for community based medicalcheckups for the elderly” に基づき、高齢者健診の方法を提示し、必要な改善策について議論を行いながら、実際に高齢者に対して診療を行う。
詳細
本研究では地域でいかに高齢者をケアすべきかを村人や現地スタッフと共に実践を通じて探求する。現在までに我々は、患者さん自身や村人、現地スタッフ、保健省と共に、実践を通じて改善を重ねながら、日常生活機能障害、認知症、抑うつ状態、糖尿病、口腔内衛生不良、孤立、高血圧、依存症、視力障害、聴覚障害、転倒リスク、尿失禁、栄養障害などをスクリーニングし、高齢者の置かれている状況に応じて対策を講じるという指針を作りあげてきた。指導者養成研修を通じてこの指針をブータンの新たな地域で診療に従事するスタッフと共有するとともに、各人が担当する地域で実行できるのか、本当に有益であると言えるのか、優先すべきことなのかを議論し、現場の意見を生かす形で方法の改善に努める。ブータンの65 歳以上人口は2005 年の29,745 人(4.7%)から2030 年までに58,110 人(6.6%)に倍増すると試算されている。現時点で基本的に医療費は無料だが、欧州諸国のドナー撤退の動きがみられる中で今後もこの方針を維持できるか重要な岐路に立っている。研修には5 つほどの県から各地区のBHU スタッフが参加する予定である。研修後は現地のスタッフの意見を取り入れた形で方法が改善されることが期待される。彼ら自身がある程度納得した形の高齢者ケアを、自分が管轄する地域で実践する。BHU のスタッフは高齢者ケアだけでなく、母子保健や感染症対策など様々な業務を実施しなくてはならない。研修は保健省や県保健局のスタッフが現場の意見を共有する重要な機会になる。
2015 年9 月ダガナ県ドゥジェガン診療所 |
保健師が高齢者に対して柔軟性の検査を行うところ |