- 研究代表者:新谷春乃(東京大学・大学院総合文化研究科地域文化研究専攻)
研究概要
クメール共和国期(1970-75 年)は、独立以降カンボジアを独裁的に統治してきたシハヌーク打倒クーデタによって成立し、厳しい言論統制が一時緩和される中、復権した知識人や新生知識人が活躍した時代である。本研究は、京都大学東南アジア研究所図書室に所蔵されるクメール共和国期の新聞『コ・サンテピアップ(平和の島)』紙と『クマエ・アイカリエイ(クメール独立)』紙の記事の分析を通して、歴史書の執筆等、当時の歴史研究を牽引していた知識人がいかなる内政・外政認識の中で歴史言説を流布していたのか明らかにする。
詳細
本研究は、東南アジア研究所図書室にマイクロ資料として所蔵されているクメール共和国期の新聞『コ・サンテピアップ(平和の島)』紙と『クマエ・アイカリエイ(クメール独立)』紙の記事分析を通して、歴史書の執筆等、当時の歴史研究を牽引していた知識人がいかなる内政・外政認識の中で歴史言説を流布していたのか明らかにすることを目的とする。申請者は、独立以降のカンボジアにおける自国史構築の試みを政治思想史と史学史の観点から研究している。独立後のカンボジアの政治的特徴は度重なる体制転換にある。歴史をめぐる知は連続性を持つものの、自国史構築を巡る試みは体制転換の影響を受けつつ変遷してきた。本研究が射程とするクメール共和国期は、シハヌーク打倒クーデタによって成立し、知識人の言論活動が活発に行われ、歴史書も多数上梓された。クメール共和国期の代表的新聞である2 紙の分析は、当時の歴史観を巡るひとつの代表的言説の解明に寄与すると考える。
申請者はこれまでのカンボジア調査において、クメール共和国期に刊行された歴史教科書、歴史書、新聞記事を収集するとともに、当時を知る知識人へのインタビューを実施してきた。これらの成果を、クメール共和国期に発行された代表的新聞2 紙の通時的・包括的分析の成果と組み合わせることで、クメール共和国期の歴史観をめぐる包括的解明に寄与すると考える。
ベトナム関係史を想起する記事(『コ・サンテピアップ』紙より) |
クメール共和国体制下で出版された新たな反仏英雄に関する本『ポーコムバオ』 |