- 研究代表者:谷川竜一(金沢大学・新学術創成研究機構)
- 共同研究者:岡本正明(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- 林 憲吾(東京大学・生産技術研究所)
- 三村 豊(総合地球環境学研究所・研究基盤国際センター)
- 山下嗣太(京都大学・大学院文学研究科)
研究概要
本研究は、日本の戦後賠償・開発援助を対象に、建築・土木・政治・環境などの視点を生かして進める歴史研究かつ分野融合研究である。実地調査として研究代表者がジャカルタ連絡事務所に2020 年2 月1 日より4 月30 日まで滞在する(予定)。それにより、1950〜80 年代に東南アジアにおいてなされた同種のプロジェクトの把握を目指すとともに、インドネシアおよび周辺地域においてなされた日本の戦後賠償・開発援助の枠組で造られた建造物の史的解明を進める。特に技術者の記憶、および対象物そのものや周辺の空間分析に注意をはらって考察する。
詳細
本研究では、戦前において日本植民地開発をリードした土木技術者たちが戦後の東南アジア──特にインドネシア──において行った巨大開発事業を対象とし、建築・土木的観点からそれらの歴史的解明を目的とする。本研究は2 点に焦点を絞って研究を行う。
1)当該時期(1950~80 年代)の東南アジアにおける米ソも含めた建設援助の全体像の把握に努める、2)そのなかから代表的と思われる日本のプロジェクトを選定し、具体的な分析を加える、というものである。1)で現地資料の収集を行うとともに、拠点滞在というアドバンテージを活かし、2)に特に注力することとし、建造物そのものの分析、現地に残っている技術の痕跡や技術者の記憶などの収集を行う。
本研究の意義は、過去の日本によるアジア侵略と戦後の関係構築を客観的に再検討しながら、日本・東南アジア関係をモノから展望するという、省察的かつ具体的な研究分野を開拓する点にある。
以上のような研究視点や研究構成をとりつつ、東南アジアにおける冷戦期建設援助の全体像を明らかにする。最終的には当該時期の建設援助プロジェクトを位置づけるための「歴史的なものさし」を作るとともに、そこにおいてなされた日本の戦後賠償や初期ODA(政府開発援助)事業の具体的な資料や記憶を集めることで、そのモノとしての質的意義も担保したい。これらにより、既往研究に建造物や空間的な観点を付け加え、政治・経済史などで語られがちな開発援助の歴史議論を、より拡張させる効果ももたらすことを期待している。学術成果としては建築・土木史分野の研究論文などを予定している。
ウィスマ・ヌサンタラ 1972 竣工(戦後賠償) |
ネヤマトンネル 1961 年竣工(戦後賠償) |