- 研究代表者:宮田敏之(東京外国語大学・大学院総合国際学研究院)
- 共同研究者:Pannee Bualek(チャンガセーム・ラーチャパット大学・研究開発研究所)
- Ratana Tosakul(東京外国語大学・世界言語教育センター)
- Supunnee Pladsrichuay(チャンガセーム・ラーチャパット大学・人文社会学部)
- 小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
研究概要
東南アジア大陸部における稲作経済の新展開を、タイにおける日本米と香り米の栽培・商品化に焦点をあて、デルタ流域の開拓史を踏まえながら、実証的に研究する。タイでは高価格で取引される日本米と香り米の栽培が拡大傾向にあり、いわば、稲作における量から質への転換が進行している。本研究では、農家、農協、精米所など生産地の主要アクターに着目し、日本米はチャオプラヤー川流域のタイ中部ナコンサワン県、香り米はムーン川流域のタイ東北部ローイエット県における栽培の拡大と商業化の進展、さらにその課題を研究する。
研究目的
タイでは2011 年に発足したインラック政権の籾米担保政策の影響で、2014 年以降、米価が低迷した。そうした中、高価格で取引される日本米や香り米の栽培と流通が従来にも増して拡大しつつある。いわば、稲作における量から質への転換が進行している。
そこで、本研究は、ナコンサワン県チュムセーン郡の日本米栽培地とローイエット県ガセートウィサイ郡の香り米栽培地において、日本米及び香り米の種籾の調達、栽培管理、籾米販売、精米、白米販売の過程を明らかにし、栽培の拡大・商品化の進展、並びにその課題を実証的に明らかにすることを目的とする。
意義
先進国はもとより、アジア新興国の所得の向上や食生活の変化により、タイ産の日本米や香り米に対する需要は増加しており、タイでは、高収量・低価格の稲作から、低収量・高価格品種の日本米や香り米の稲作への転換、いわば量から質への転換が進行しつつある。この転換に着目した実証的な研究は、従来のタイ稲作経済研究にはなく、本研究の研究史上の意義は大きい。
期待される成果
日本米及び香り米栽培拡大による量から質への稲作の転換が、農民の生活、農協や精米所の経営のあり方にどのような変化をもたらしているのかを明らかにする。そのプラスの側面のみならず、その転換の中に潜むリスクや課題も浮き彫りにできると考えられる。同時に、本研究は、東南アジア稲作の新展開を総合的に研究していくための日本とタイの研究ネットワークの強化に大いに資する。
タイ中部ナコンサワン県・雨季の洪水によって冠水する稲作地帯(10 月) |
タイ東北部ローイエット県・稲刈り直前の香り米ジャスミン・ライス稲作地帯(11 月) |