IV-14.「タイにおけるクメール碑文の基礎研究」(平成30年度 FY2018 新規)


  • 研究代表者:佐藤恵子(上智大学・アジア人材養成研究センター)
  • 共同研究者:小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • Chirapat Prapanvidya(シラパコーン大学・サンスクリット・スタディーズ・センター)
  • U-Tain Wongsthit(シラパコーン大学・サンスクリット・スタディーズ・センター)
  • Nipat Yamdate(シラパコーン大学・考古学部)

研究概要

本研究は、アンコール王朝の勢力下にあった現在のタイに所在するクメール碑文に関する国際的な基礎研究である。カンボジア近隣諸国の内、タイ所在のクメール碑文は最も多く確認されているだけでなく、碑文の作成時期が前アンコール時代から後アンコール時代までと長い。したがってアンコール王朝時代の「周辺」地域を検討するにあたって、タイ所在のクメール碑文は極めて重要な史料と位置づけられる。本研究では、この史料の基礎情報を整理する。

詳細

本研究は、タイに所在するクメール碑文の目録を作成し、各碑文の最新の所在と状態を確認するとともに、翻訳と注釈を行うことを目的とする。

かつてG. セデスが、これらの整理・翻訳作業を行った。しかし、当時の全てを取り扱ったわけではなく、またこの内いくつかで誤った字訳と翻訳がなされている。さらにタイの独特な学術的慣習も刻文研究に影響を与えている。通常、クメール碑文は「K」「Ka」を番号に付しているが、タイで確認された刻文は全て出土地別に分類されている。両者の照合作業は、これまで個別に必要に応じて行われてきたにすぎない。また、オリジナルの開示も外国人に対しては厳しく制限されている。それにもかかわらず公開されている碑文の字訳はクメール碑文研究者によるものではないばかりか、既に翻訳がなされた刻文の訂正は基本的に行われない。したがって極めて不十分な情報かつ誤った字訳を基にこれまで研究が行われてきたと言える。

本研究では、クメール碑文の基礎情報の整理をタイ人研究者と共に進め、その成果を英語とタイ語で発表する。これによってまず、この史料に関する最新かつ詳細なデータを広く提供することができる。そしてタイ語でも発表することでタイのクメール研究の発展に貢献することができ、碑文の国際研究の進展が今後望める。さらに本研究で基礎情報を整えることで碑文の破損状況を確認することができ、将来デジタル技術を使用した碑文分析を行う際の基本資料を用意することが期待できる。


スドック・カック・トム遺跡

スドック・カック・トム碑文(K.235)が確認された場所