- 研究代表者:今中雄一(京都大学・大学院医学研究科)
- 共同研究者:瀬川裕美(京都大学・大学院医学研究科)
- 坂本龍太(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- Sonia Pilar Suguimoto Watanabe(京都大学・医学教育センター)
- Chencho Dorji(ブータン医科大学・医学部)
- Sither Dorji(ブータン医科大学・医学部)
- Pemba Yangchen(ブータン保健省・公衆衛生部門)
- Kunzang Dorji(ブータン医科大学・公衆衛生学科)
- Ugyen Wandhi(ブータン医科大学・公衆衛生学科)
- Chimi Dema(ブータン保健省・ランゲトゥン病院)
- Yankha Dorji(ブータン保健省・プンツォリン病院)
- Sonam Zangmo(ブータン保健省・ゲレフ病院)
研究概要
ブータン王国の独自の文化やGNH(Gross National Happiness:国民総幸福量)の理念に即した「学校保健+コミュニティー単位の集団教育及び個別指導+定期健診」のNCD(Non Communicable Disease:非感染性疾患=糖尿病や高血圧などの生活習慣病)予防のための介入モデルを検討し、作成を目指す。社会文化的リスク要因及びリスク認識レベル測定(質問紙票)、行動学的リスク要因測定(質問紙票及び食事・運動記録)、生物学的リスク要因測定(BMI、腹囲、尿中Na/K 値、尿中Glu、血中Glu、血中Cre、随時血糖、体脂肪、血圧)及び幸福に影響を与える要因測定を実施し、設定時期ごとに介入の効果を評価する。本研究は介入実施評価の前に、GNH 調査結果やNCD 調査結果のデータ入手が出来れば、社会経済文化因子を組み合わせて地域差や各因子の関連を分析する。将来的に、健康と幸福を守る効果的な保健指導の方法を検討することでNCD 対策に貢献する。
詳細
本研究では、GNH の概念に即したNCD 予防のための介入モデルを検討し、作成を目指す。ブータン王国では近年の急激な経済発展に伴うライフスタイルの変化によりNCD の増加及び医療費負担の増加が重要な課題となっている。
平成29 年度に実施したNCD リスクと幸福感に影響を与える社会文化的因子についての質的調査(PHASE1)結果より、学校保健についても世帯全体への普及効果を促すような介入モデルを作成する計画である。また、GNH 調査結果やNCD 調査結果を収集することができれば、NCD 有病率の地域差や、NCD 有病率とGNH や医療費との関連も解析する予定であり、より文化に適した地域差を考慮に入れた介入モデルつくりに役立てることが出来る。
介入モデルの有効性を社会文化的リスク要因、リスク認識レベル、行動学的リスク要因、生物学的リスク要因、幸福に影響を与える要因から多角的に評価し「ブータン王国における健康と幸福」を探求することで、より有効な介入モデルを作成し、今後のブータン王国におけるNCD 対策の確立に貢献していくための基盤となる。
これまで、ブータンにおけるNCD 対策の介入研究は実施されていない。独自の文化やGNH の概念に沿った質的研究の結果をもとに、本研究にて介入モデルを作成することで、ブータン王国におけるNCD 対策に貢献することが出来る。ブータン王国の文化より、ガイドラインは作成されていても実践が困難である側面がある。
本研究を通して、より現場に即した介入モデルを実践的に吟味・提示していくことで、GNH の概念に沿った継続可能かつ有効性のあるNCD 対策の確立の一助となることが期待される。
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