- 研究代表者:飯塚宜子(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- 共同研究者:大石高典(東京外国語大学・現代アフリカ地域研究センター)
- 島村一平(滋賀県立大学・人間文化学部)
- 山口未花子(岐阜大学・地域科学部)
- 関 雄二(国立民族学博物館・研究部)
- 長岡慎介(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
- 坂本龍太(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- 小林 舞(総合地球環境学研究所・研究部)
- 王 柳蘭(同志社大学・グローバル地域文化学部)
- 川那辺香乃(マナラボ)
研究概要
地域研究の方法論は、研究者が捉える事象をどう表象するかという表現形態と深く関わる。パフォーマンス・エスノグラフィー(以下PE)は、フィールドワークにおける身体的、直観的、具体的な経験を表現する方法論として議論されてきた。本研究チームは6 年前からモンゴル草原やカメルーンの熱帯雨林などの人と自然の関係性を、一般市民や児童に向けて「場のなかで身体性を伴って伝える」活動に取り組んできた。本研究では、1)共同フィールドワーク、2)PEを応用した成果公開プログラムの開発と実践、3)研究会での対話を通して、PEを活用する地域研究方法論とその特性を明らかにしていく。
詳細
生物・文化多様性の喪失は、人々の生態知や伝統知の喪失と軌を一にする。その喪失の原因として、経済・宗教的要因とともに、「学校教育」の浸透が挙げられる。「ローカルな知がグローバル化といかに折り合うか」という各々の地域がそれぞれの文脈で抱える今日の課題は、教育の場にも現れている。地域社会の内側で共有・構築されてきたローカルな知のありようや価値を、グローバルなコンテクストの中でどのように共有していくか探索が必要である。
地域研究者はフィールドで、人間が「生きる世界」の多様性に出会う。その研究成果は主に論述されることで表現されてきたが、本研究では、人々の「生きる世界」に近づけた表象の方法論を考えたい。それにより次世代の児童や市民自身が、研究者により意味づけされたローカルな知を外部化された知識として受け取るだけではなく、彼ら自身が主体的に意味づけを行う機会を創出する。「人々による、ローカルな知への意味づけや価値づけ」の機会創出は、ローカルな知がグローバルな文脈で捉えなおされる方法論を教育の場につくる社会実験である。その具体的な方法論としてナラティブや非言語的な手がかりとともに、PE を用い、この一連のプロセスを一つの新たな地域研究方法論として捉えたい。
本研究の目的は、PE を応用する地域研究を展開し、直接的に社会に働きかけその意味を問い、その方法論の特性を明らかにしていくことにある。地域研究への社会的に広範なアクセスにつながるものであり、地域研究成果の社会還元の方法論の進展のみならず、地域研究の新たな社会的価値の探求につながることが期待される。
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