- 研究代表者:御田成顕(九州大学・持続可能な社会のための決断科学センター)
- 共同研究者:甲山 治(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- 嶋村鉄也(愛媛大学・大学院農学研究科)
研究概要
インドネシアの泥炭火災抑制は気候変動緩和の観点から喫緊の国際的課題である。本研究では、泥炭火災の消防団が機能する「消防インフラストラクチャー」として、1)制度に裏付けられた明確な責任、2)参加者のインセンティブ、および3)人的資源と物的資源を有する消防組織を想定した。そして、消防団と地域社会への聞き取り調査を通じ、消防インフラストラクチャーの充足状況と火災発生状況との関係性を明らかにすることで、地域社会レベルにおける消防活動において消防インフラストラクチャーがどのような役割を果たしたのかを検討する。
詳細
本研究では、当初森林火災の消防を目的として設置され、今日では泥炭火災消防の担い手として位置づけられる地域社会の消防団(MPA;Masyarakat Peduli Api)が機能を発揮するための条件を明らかにすることを通じ、林野行政の多層化とパラダイムシフトの検証、ならびに泥炭火災対策ガバナンスの課題を検討する。
泥炭火災は様々な環境問題を引き起こす。国際的には火災に伴う大気への温室効果ガスの放出が挙げられる。そしてその煙は越境ヘイズ問題として国際的批判の対象となっている。また、国内においても火災被害跡地の放棄により荒廃地が拡大し、それに伴い新たな森林伐開や地域住民の生計の安定性の喪失を招く可能性がある。本研究は、地域消防団が機能する基盤条件を明らかにすることで、これらの問題の解決に寄与する可能性を有する。
泥炭地保全の文脈において、産業植林会社など森林開発企業は自然環境および社会環境に与える負担から批判的に捉えられてきたが、泥炭火災対策に対するこれらの企業の役割と責任は大きい。消防団は、これらの企業と地域社会との接点として機能しており、これまで一面的に捉えられてきた企業の役割を示すことが可能となる点に学術的新規性がある。また、消防団が機能する要因を明らかにすることで、消防活動支援といった実践面での応用も期待できる。
火入れ農業に変わる生計手段の構築が求められている |
企業と行政の支援によって設置された住民消防団の事務所 |