- 研究代表者:竜野真維(京都大学・大学院医学研究科)
- 共同研究者:加藤恵美子(京都大学・大学院医学研究科)
- 坂本龍太(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- 原田浩二(京都大学・大学院医学研究科)
- Ardiana Ekawanti(マタラム大学・医学部)
- Hamsu Kadriyan(マタラム大学・医学部)
- Seto Priyambodo(マタラム大学・医学部)
- I Gede Putu Wirawan(ウダヤナ大学・農学部)
研究概要
小規模金採掘がさかんに行われているBrang Rea 地域において、奇形児の出産、小児の発達異常が増加しているのではないかといわれている。このことに関し、過去10 年間および今後1 年間の状況について、件数、症状などの詳細な情報を収集する。これらの小児とその母親の毛髪や臍帯に含まれる有機水銀濃度を測定し、小規模金採掘実施地域と非実施地域の対照群とを比較することによって、有機水銀による影響を評価する。
詳細
本研究は、小規模金採掘(Artisanal small-scale gold mining:ASGM)がさかんな地域であるインドネシア西スンバワにおける乳幼児の先天性形態異常や心身障害の発生状況と、有機水銀曝露の影響について明らかにすることを目的とする。ASGM 実施地域では先天性形態異常や心身障害が多いのか、多いのであれば、有機水銀曝露がその原因であるのか、について検証する。
本調査の対象地域で、先天性形態異常や乳幼児に重度心身障害が多発しているといわれ、ASGM で使用される水銀との関連が心配されているが、正確で詳細な情報がない。本研究で先天性形態異常や心身障害の有病率、それらの特徴について詳細に調査することにより、どのような状況が生じているのかを明確にし、疫学的観点から現状を評価する。
小規模金採掘では水銀蒸気の吸入による無機水銀中毒が問題視されているが、無機水銀が胎児や乳幼児に及ぼす影響は明らかでない。一方、有機水銀は、胎児・乳幼児の神経発達に悪影響を及ぼすことが知られている。これまでの研究では小規模金採掘によって深刻な有機水銀汚染が生じることは証明されていないが、無機水銀が環境中に排出され続けた場合、環境微生物により有機水銀へ変換され汚染が生じることは考えうる。本研究で有機水銀による影響を評価することにより、影響が示唆された場合には現地協力機関を通じて住民に対策を提案し、被害拡散を防止することができる。否定的であった場合も、原因究明のための重要な所見ととらえ、今後の研究にて他の原因を積極的に探索する。
金精製の過程において、水銀を含む合金を素手で扱う男性 |
障害をもつ小児とその母親を訪問し診察している様子 |