- 研究代表者:渡辺 長(帝京科学大学・医療科学部)
- 共同研究者:Jiraporn Chompikul(マヒドン大学・アセアン保健開発研究所)
- Nuanpan Pimpisan(ナコンラチャシマ病院)
- 河森正人(大阪大学・人間科学部)
- 木村友美(大阪大学・大学院人間科学研究科)
- 坂本龍太(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- Kwanchit Sasiwongsaroj(マヒドン大学・アジア言語文化研究所)
研究概要
本研究では、人口高齢化の進むタイ東北部の家族介護者の介護負担感を医学・心理学的な手法によって調査し、さらにその介護負担感に関連する背景因子(社会的要因、家族関係、経済状態など)を、人類学的手法も取り入れて多面的に調査することで、地域高齢者の介護を行う家族をとりまく現状を描きだすことを目的とする。また、結果をふまえて、地域の特性や状況に応じた介護負担軽減プログラムを構築することを目指す。
詳細
申請代表者は理学療法士として在宅介護に関わってきたが、要介護高齢者の介護は本人や家族内、またそれを支える医療者のみの問題にとどまらず、社会的背景の影響を大きく受けた「地域における課題」であることを痛感した。本研究では、多分野からの共同研究者とともに協働しながら、タイにおいて「介護者の負担感」に焦点を当てることに学術的新規性があり、結果をもとにその改善に向けた提言につなげるという社会的意義があると考える。
昨年度はタイのナコンラチャシマ県に赴き、タイの高齢者介護における家族の介護負担の実態と、それをとりまく背景因子を明らかにすべく実際の家族介護者へのインタビューを実施した。今年度は、得られた結果を共同研究者や現地スタッフらとともに分析し、意見交換をし合いながら、地域にそくした介護負担軽減プログラムを勘案する。
具体的には、家族介護者への研修、住宅改修や福祉用具を始めとする住環境整備、疾病管理(誤嚥性肺炎予防などの口腔栄養管理)、デイや訪問サービスを始めとするコミュニティの介護予防システム構築などが考えられる。こうした仕組みづくりの試みは将来的にタイ同様、少子高齢化が進行し家族のかたちが変化しつつある他の東南アジア地域における「介護疲れ・介護うつ」対策に資する可能性があると考える。