VI-7.「日尼経済連携協定(EPA)での人の移動の歴史と現状」(令和1年度 FY2019 新規)


  • 研究代表者:村雲和美(筑波大学・人文社会科学研究科)

研究概要

本研究は、2008 年より開始した日本とインドネシア間の経済連携協定(Economic Partnership Agreement:以下、EPA)の枠組みで越境するインドネシア人看護師・介護福祉士に焦点をあてて、日本の外国人労働者受け入れ政策の形成にEPA スキームが今後どのような関わりをもつかをフィールド調査で丁寧に分析し、国際労働移動政策に着目する。インドネシア人看護師・介護福祉士らの越境の背景にはインドネシア国内でのどのような要因が関係しているのか。なぜEPA の枠組みで来日するのか。EPA の枠組みで来日した看護師・介護福祉士は病院・介護施設でどのような働き方をしているのかという点を明らかにする。

詳細

2018 年に10 年目を迎えるEPA で来日するインドネシア人看護師・介護福祉士の現状と課題を体系的に把握することである。本研究では、なぜインドネシア人看護師・介護福祉士が越境してくるのかという問いを足掛かりとして分析を進めたい。

研究目的は具体的に3 点である。
1) EPA の枠組みの整理と日本の受け入れ機関、インドネシアの送り出し機関での資料収集。
2)インドネシアの医療分野の現状について、看護学部での教育の様子を聞き取り調査する。
3)受け入れた病院・介護施設での就労状況、受け入れ体制や国家試験までの支援制度にどのような差異があるかを比較調査し、問題点の整理と課題を分析する。

本研究では、「人の移動」「国際労働移動」「高度人材」をめぐる研究のなかでEPA の枠組みで来日する看護師・介護福祉士候補者受け入れは日本独自の「人の移動」の制度であると位置づける。同時に、実施開始から10 年を迎える2018 年から過去10 年間の実態と課題を明らかにし、変遷や限界性、再構築を分析することが本研究の意義である。実施後10 年間のEPA の課題や限界性を浮き彫りにすることで、外国人労働者受け入れ政策の糸口を検証し、学術的に貢献する。

なぜインドネシア人看護師・介護福祉士が越境してくるのかという問いを明らかにし、日本の外国人労働者受け入れ政策の形成にEPA が今後どのような関わりをもつかを模索することにつながる。また、先行研究で指摘される「受け入れた病院・介護施設が現場で使える研修や就労モデル」の構築を目指す。日本国内および国外に対して日本の外国人労働者受け入れへの姿勢や移民研究の進展の一端を示すであろう。

 


ジャカルタにおいてEPA12 陣の壮行会とオリエンテーション(大統領府海外労働者派遣保護庁提供)

アニス・バスウェダン・ジャカルタ首都特別州知事と研究の議論(アニス・バスウェダン氏より提供)