- 研究代表者:木場紗綾(公立小松大学・国際文化交流学部)
- 共同研究者:Pavin Chachavalpongpun(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- Paul Chambers(ナレスワン大学・政治学部)
- Rosalie Arcala Hall(フィリピン大学ビサヤ校・社会科学部)
- 安富 淳(宮崎国際大学・国際教養学部)
- Beni Sukadis(インドネシア防衛戦略研究研究所)
研究概要
本研究では、1)パラミリタリーの及ぼす治安上の脅威は何か、2)東南アジア諸国の治安部門(主に軍・警察)は、パラミリタリー組織による人権侵害をどのように定義し、どのようなコントロール・処罰・予防のための策を講じてきたのか、行政府や議会、市民社会がパラミリタリーを監視できないのはなぜか、3) どのような他国の理論が援用可能か、という問いを設定し、比較研究を実施する。パラミリタリーとは、法令に定められ(statutory)、国家の治安機構を下支えする民間の組織を指す。 東南アジアでは伝統的に、国境警備隊/沿岸警備隊、憲兵、情報機関部隊、民兵などが、正規軍や警察の役割を補完してきた。フィリピン、インドネシア、タイの 3 カ国を対象とし、それぞれの国を専門とする研究者の間で研究会、現地調査を行い、知見を共有する。
詳細
本研究の目的は、パラミリタリー組織の適切な監視メカニズムのあり方を分析・検討することであり、以下の 3 つの問いを立てている。
1)パラミリタリーの及ぼす治安上の脅威は何か。
2)東南アジア諸国の治安部門(主に軍・警察)は、パラミリタリー組織による人権侵害をどのように定義し、どのようなコントロール・処罰・予防のための策を講じてきたのか。また、行政府や議会、市民社会がパラミリタリーを監視できないのはなぜか。
3)他国・他地域のモデル(特に民間軍事会社の監視に関する欧米の理論)からの援用はどの程度可能か。
本研究は、1)パラミリタリーを含む国家/非国家の治安部門の人権侵害とそれに対する監視・制裁・告発メカニズムに関する制度の調査、2)類似の文脈として、欧米や南米の民間軍事会社の監視に関する先行研究の調査、3)対象 3 カ国における事例研究(主に軍・警察および NGO へのインタビュー)、の 3 つの方法をとる。
1 年目は、基礎文献と資料を分析し、「グレーゾーン」としてこれまで見過ごされてきたパラミリタリーへの適切な監視メカニズムに関する理論的枠組を分析する。同時に、対象とする 3ヶ国の制度と事例について、公開情報を調査し、年 3 回のセミナーを京都大学にて実施する。さらに、同分野に知見を有する東南アジアからの専門家をリソースパーソンとして、オンライン会議などで意見交換を行う。2 年目は各自が現地調査を実施し、それらを基に論文を執筆する。
タイ陸軍から訓練を受けるパラミリタリー(Phuket News より) |
2017 年に国軍と反政府勢力との大規模な戦闘があったフィリピン・マラウィ市では、陸軍が警察 やパラミリタリーと緊密に連携している。写真は共同研究者のロサリー・ホール教授。(本人撮影) |