- 研究代表者:西村謙一(大阪大学・国際教育交流センター)
- 共同研究者:岡本正明(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- 永井史男(大阪市立大学・大学院法学研究科)
- 小林 盾(成蹊大学・文学部)
- 籠谷和弘(関東学院大学・法学部)
- 菊地端夫(明治大学・経営学部)
研究概要
本研究は、インドネシアのジャワおよびフィリピンで、2015 年度から 2018 年度にかけて申請者らが実施した住民意識調査の結果に基づき、両国における地方自治に関する住民意識の実態を明らかにし、自治体パフォーマンスと住民参加や住民の満足度、ソーシャル・キャピタルの豊かさとの関係を重層的に解明する。このために、住民の意識および行動と自治体パフォーマンスにいかなる関係があるかを確認するための統計学的な分析を行う。
詳細
本研究は、住民調査のデータを用いて自治体パフォーマンスと住民の意識や行動との関係を明らかにする。そして、本研究の結果と申請者らがかつて実施したエリート調査から導き出された諸結果を接合して、東南アジア地域で民主化と分権化が進展している国々における地方ガバナンスのあり方を立体的に描き出すことを目的としている。
本研究の意義は以下のとおりである。第一に、本研究は、量的な住民調査に基づく統計学的分析により住民と自治体の関係を明らかにし、上記 2 カ国の地方自治研究に新たな知見を提供する。両国の分権化は、住民参加を促進する一方で、エリートによる地方権力の掌握とレントシーキングの強化を促すなど、地方政治に複雑な様相を与えている。この実態については、様々な事例研究やそれに基づく一般化の試みが行われているが、量的調査に基づき統計学的分析を行ったものではない。第二に、本研究は、住民の政治意識や自治体のパフォーマンス評価、地方自治への住民参加の実態、住民のネットワークのあり方、住民の日常的な生活意識を包括的に調査しており、これに基づいて住民と自治体パフォーマンスの関係を重層的に解明する。第三に、本研究は上記の分析を 2 国間比較にも配慮して行い、東南アジア地域における民主化と分権化が地方ガバナンスにどのような影響を与えるかについて一定程度の普遍性を有する知見を提供しようとする点で前例のないものである。
フィリピンのカビテ州内のバランガイが獲得した各賞の盾 |
デジタル化を通じた住民参加を目指す NGO(Sinergantara)でのインタビュー(2015 年) |