IV-4. 「人間の回復と地域社会の再生のための開発実践考──フィリピン・ ダバオ市の有機農園を対象とした予備的考察」(令和1-2年度 FY2019-2020 継続)


  • 研究代表者:青山和佳(東京大学・東洋文化研究所)
  • 共同研究者:中西 徹(東京大学・大学院総合文化研究科)
  • 岸 健太(秋田公立美術大学・大学院複合芸術研究科)
  • 藤岡 洋(東京大学・東洋文化研究所)
  • 文 景楠(東北学院大学・教養学部)
  • 清水 展(関西大学・政策創造学部)
  • Mario Lopez(京都大学・東南アジア地域研究研究所)

研究概要

本研究は、地域研究の経験を共有する人文社会科学系の研究者および表現者(アーティスト、デジタルアーカイブ研究者)の協働により、有機農業が人間の福祉と地域社会の再生に対してもつ意味を探る。 本年度の科研費応募を念頭に、フィリピン、ダバオ市における有機農園を参照事例としつつ、参加者各自による文献・関連資料の渉猟および全員による討論を行い、有機農業の収益性、社会関係や農民文化への影響を検討するための枠組みを模索する。

詳細

本研究の目的は、「発展途上国」における低所得層の状況を理解するための分析枠組みを提示し、それを踏まえて、彼らの生存戦略の一つとなる代替的な「共生」モデルを、小規模かつ農家個別の営みとして捉えられてきた有機農業をもとに提案することである。このことは、グローバル化に伴う市場経済拡大のなかで彼らが直面している、貧困線以下の生活水準からは脱出したが社会関係が脆弱化しているという問題を考える糸口になるという意義をもつ。

初年度の計画では、別途予算でフィリピン、ダバオ市の有機農園をフィールドワークし参照事例を提供する予定であった。しかし、 COVID-19により不可能となったため、Zoomによる研究会 2 回、および可能な限り年度末までに国内で 1 泊 2 日の合宿研究会を開催することを通じて、最終年度およびその先に向けた研究の展開を図る。

したがって、期待される成果、効果もつぎの通りに修正する。 第一に、「有機農業をめぐる規範的・実証的議論」の確認である。 基本的な文献の内容を確認し、グローバルサウス、とくに東南アジアに応用できる論点と改めて付け足すべき論点を整理した上で、新しい仮説を提示する。第二に、有機農業について、人文社会科学研究者が調査研究に取り組むことの意義を経済学、人類学、哲学、アート、デジタルアーカイブ学の観点から確認する。第三に、以上を通じて、本研究プロジェクト終了後の来年以降に実施を検討している有機農園におけるフィールドワークでの具体的な調査内容を構想する。

 


研究会「いまなぜ有機農業なのか」より、ダバオ市の有機農園

研究会「ティナとの対話」より。