- 研究代表者:芹澤知広(天理大学・国際学部)
- 共同研究者:矢野正隆(東京大学・大学院経済学研究科)
- 亀山隆彦(龍谷大学・アジア仏教文化研究センター)
- 西田昌之(国際基督教大学・アジア文化研究所)
- 大野美紀子(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
研究概要
本研究は、華字新聞メディアを利用して東南アジア広域の華語社会内情報流通形態の比較分析を行う。東南アジア地域研究研究所図書室が所蔵する華字紙『華僑商報』(1948-72、フィリピン)・『星泰晩報』(1950-73、タイ)・『星暹日報』(1950-67、タイ)について、『星暹日報』未所蔵分を補充したうえで各紙の刊行状況を一覧できる巻号リストを作成する。この研究ツールを構築することによって、華字新聞メディアが媒介した情報流通情勢から冷戦期東南アジア各国の華僑・華人社会の国境を超えたネットワークと連動する社会変化を比較分析するための研究基盤を構築する。
詳細
本研究は、近代以後東南アジアにおける刊本・新聞の出版者・流通者が香港・ベトナム・シンガポール・バンコクと広範囲に渉ることに着目し、書誌情報(書名、編著者名、出版地・者・年、出版形態、主題、等)と所蔵情報(所蔵館、所蔵年)の資料情報を用いたBibliometrics 手法により導出される数量的なエビデンスの裏付けの下に、広域かつ長期スパンにおける華字紙刊行から見た華僑・華人社会史の変動と連動を明らかにすることを目的とする。
東南アジア地域研究研究所図書室所蔵『星暹日報(Hsing Hsieh Jih Pao)』の1950~60 年代発行分について、当該新聞の簡易な巻号リストを作成・公開することで、爾後のタイ華語社会における新聞メディアを介した研究のための研究基盤を構築することには大きな意義がある。この巻号リストは、各リールに収録されている号数・発行年月日・ページ数を収録し、利用者が閲覧を希望する号を検索しやすくするだけではなく、さらにそれらのデータを利用した定量分析を行うことで、約四半世紀に渉る大部の日刊紙刊行の消長を発行頻度やページ数の増減から通観することも可能になる。
また、本研究は、華字紙という新聞メディアそのものを研究資料として利用する手法を地域研究へ応用することによって、新たな地域研究方法論の提言に繋がることが期待できる。将来には東南アジア各国における華字新聞の刊行状況について各地域研究者による報告及び情報交換を行うことで、同様の試みが各国においてどの程度可能であるのかを検討することも期待できる。
2021 年8 月26 日にオンラインを用いて開催された研究会 |
東南研図書室のマイクロフィルムリーダーを使った華字新聞の調査 |