IV-13.「共生的関係の発露をめぐる地域間比較研究──東南アジアの境界域および紛争経験社会における移民・難民と身体に着目して」(令和3年度 FY2021 新規)


  • 研究代表者:堀江未央(岐阜大学・地域科学部)
  • 共同研究者:速水洋子(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 杉江あい(名古屋大学・高等研究院)
  • 吉澤あすな(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • 下條尚志(神戸大学・大学院国際文化学研究科)
  • 黄 潔(名古屋大学・高等研究院)

研究概要

本共同研究は、東南アジアとその隣接地域の移民や難民をめぐる対立を対象に、共生的関係に関する比較研究を行う。当該地域では多民族状況が常であるが、国民国家の管理・統合や政治経済的変化のなかで人々の対立が激化する場合もある。本研究では、地理学、人類学、地域研究の協働により、当該地域の共生的関係が何に立脚するのかを、政治、経済、文化および日常性に着目して明らかにし、身体/身体性の観点に立脚しつつ「共生」概念を精緻化する。

詳細

本共同研究の目的は、東南アジアとその隣接地域で見られる、多様な状況における共生的関係とその発露の契機を明らかにし、「共生」概念を精緻化することである。本共同研究では、ときに対立関係や緊張をはらみながらも他者への志向性が見られる状態を「共生的関係」ととらえる。

本共同研究の独自性は、共生について考える際に身体に着目する点である。身体は、観念・物質レベルの両方において他者に開かれ、分有されたものであるとする議論が近年進んでいる。この自己と他者の不可分性により、規範的な「共生」理論や普遍的人権主義が前提とする西欧近代的個人観が解体されるなか、「共生」概念をいかに再編することができるのか?東南アジアとその隣接地域をフィールドとし、身体性やヴァルネラビリティといった議論を経由しつつ共生という概念の精緻化に取り組む点が、本共同研究の意義である。今一つの意義は、共生的関係の空間的広がりに着目する点である。さまざまな境界を前提視せず、境界域で境界を揺るがしつつ立ち現れる関係をとらえることを通して、「共生」のありようや発露の契機を明らかにするとともに、移民・難民の移動性とそれをめぐる政治、紛争経験社会を再考していく。

本共同研究によって、より人々の生活や身体の感覚に根差した「共生」概念を提示し、外国人に対する不平等な待遇の制度化やその歴史を捨象した日本の「共生」概念をボトムアップ的、文脈依存的に捉え直していくことが期待できる。

 


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