- 研究代表者:宮田敏之(東京外国語大学・大学院総合国際学研究院)
- 共同研究者:坂井真紀子(東京外国語大学・大学院総合国際学研究院)
- 高橋 塁(東海大学・政治経済学部)
- 小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
- Pannee Bualek(チャンガセーム・ラーチャパット大学・研究開発研究所)
研究概要
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済の悪化により、国際食料安全保障の重要性がますます高まっている。国際食料安全保障実現のためには、食料の増産と円滑な食料貿易が必要となる。本研究は、主要米輸出地域である東南アジア大陸部からアフリカへの米輸出を通じて、国際食糧安全保障の現状と課題を検討する。特に、アフリカ向けの輸出が全輸出量の半分に達するタイから、世界有数の米輸入地域であるアフリカへの米輸出を着目し、国際食料安全保障の現状と課題、特に、国際的な食料貿易の現状と課題を分析する。
詳細
本研究の目的は、国際食料安全保障の観点から、世界の主要米輸出地域である東南アジア大陸部からアフリカへの米輸出の発展とその課題を検証することになる。ベトナムやカンボジアの米輸出も念頭に置きながら、特に、タイのアフリカ向け米輸出の変化とその特徴を実証的に検証する。というのも、世界的な米輸出国であるタイからの米輸出の半分がアフリカに向けられているからである。タイからアフリカへ、どのような品種の米、あるいは、規格の米が輸出されているのかを検証する。また、アフリカにおける食文化の特徴および米消費の変化についても分析を加える。
第一に、国際食料安全保障の観点から、東南アジア大陸部・タイの米輸出が、世界有数の米輸入地域であるアフリカの食料確保に持つ意味を明らかにするという意義がある。第二に、タイの米輸出の半分がアフリカに輸出されている状況に鑑み、アフリカ向けの米輸出が、タイの米輸出経済の発展に果たした役割を明らかにする意義がある。第三に、アフリカにおけるタイの米の消費にも着目し、アフリカの経済状況の変化、食文化の変化を明らかにするという意義を持つ。
本研究は、東南アジア・タイの米輸出の半分以上がアフリカに輸出されている事実の歴史的経緯を解明するという効果を持っている。この分析は、東南アジアからアフリカへの米輸出が、国際食糧安全保障の観点から、どの程度、重要な意味を持っているのかを検証する貴重な手掛かりになる。また、本研究はアフリカにおいて、どのような種類あるいは規格のタイの米が輸入され、どのように消費されているかを分析する。この課題は、これまで学術的研究の射程に入っていない。この研究により、米に関わるアフリカの食文化の変容を解明するという効果も期待される。
タンザニアのランチ:魚のトマト煮とご飯[写真・坂井真紀子] |
メコンデルタにおける稲の収穫(2015 年3 月ティエンザン省ゴーコン市社)[写真・ 高橋塁] |