IV-16.「パフォーマンスによる『地域の知』の再構築──教育への応用に関する共同研究」(令和3年度 FY2021 新規)


  • 研究代表者:飯塚宜子(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 共同研究者:大石高典(東京外国語大学・現代アフリカ地域研究センター)
  • 園田浩司(京都大学・アフリカ地域研究資料センター)
  • 山口未花子(北海道大学・大学院文学研究院)
  • 渡辺貴裕(東京学芸大学・教職大学院)
  • 小林 舞(立命館大学・政策科学部)
  • 田中文菜(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • 関 雄二(国立民族学博物館・研究部)
  • 矢野原佑史(京都大学・アフリカ地域研究資料センター)
  • 坂本龍太(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 長岡慎介(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • 弓井茉那(ベベリカ シアターアンドカンパニー)

研究概要

本研究では、地域の知や文化の継承のなかに認められる身体性、対話、相互行為、物語、そして象徴性といった要素をもとに、パフォーマンスを通して、様々な地域像を市民や児童が学ぶワークショップを実施する。今年度は児童や市民に向けたプログラム実践の他、記録映像をカナダ先住民に還元し、本研究の学びや表象方法について意見交換を行う。また論集の企画編集もすすめ、近代教育における科学的思考様式を相対化し補完する教育の可能性を、地域研究の立場から提言する。

詳細

本研究の目的は、カナダ先住民やアフリカ狩猟採集民ら自身が知を継承する方法(身体性、対話、相互行為、物語、象徴性など)に倣い、日本の児童や市民がパフォーマンスや演劇手法を通して学ぶことにより、方法に内在する知の様相を明らかにしていくことにある。これまで地域研究が、近代教育や学術の方法である客観的な記述によって成果を著してきたのに対し、本研究では、研究者、パフォーマー、市民、児童らが即興的な演劇などによる場を共創するプロセスの中で立ち上がる地域の表象や理解の様相を明らかにする。今年度は、児童向けプログラムのオンライン化を継続しつつ、大人向けの社会教育を新たに実践し、その方法論や様相の分析を進める。そして記録映像等を現地に還元し現地の人々の協力によりプログラムを改定していくことを試みる。そして多様な地域に学ぶ一連の実践の特集を組む論集にまとめたい。

本研究の意義は、分析的・客観的にアプローチする地域像に、様々な年齢の学習者による主体的・統合的なアプローチを補完する可能性を拓くことにある。今日、教育の領域ではアクティブラーニングの方法が模索されている。地域における身体性や相互行為など、地域研究だからこそ示し得る根源的な知の継承方法を、如何に教育の場で再生し得るかを提示する。

期待される効果としては、地域研究の成果を社会に開く機会や方法が広がること、国際理解教育や演劇教育などの教育分野との連携が可能になること、そして統合的な地域研究への新しいアプローチの提示などが挙げられる。

 


狩猟採集民バカ・ピグミーの掻い出し漁を模倣するオンラインワークショップの一場面

カナダ先住民クリンギットの文化を知るオンラインワークショップの一場面