お知らせ

東南アジア学会地区例会 「ラーマン・タンマユット/スラウェシ地震緊急報告」

東南アジア学会関西地区例会では、11月10日に下記の要領で研究会を開催します。
タイのラーマン・タンマユットに関する自由研究報告(前半)と、9月28日に発生したインドネシア・スラウェシ中部地震津波災害に関する緊急報告(後半)の二本立てでの開催です。前半のみ、後半のみの参加も可能です。ふるってご参加ください。

日時:2018年11月10日(土)13:30~17:30
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議
http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/

プログラム
【第一部】自由研究報告 13:30~15:30
和田理寛(京都大学東南アジア地域研究研究所・研究員)
「タイ国における第三の宗派の形成と終焉:ラーマン・タンマユットの事例から考える民族と上座部宗派」
・コメント 伊東利勝(愛知大学)

【第二部】スラウェシ中部地震災害緊急報告 15:40~17:30
松井和久(松井グローカル合同会社・代表)
「スラウェシ中部地震・津波の被災地はどんな地域なのか:中スラウェシ州パル市、ドンガラ県、シギ県」

報告要旨
和田理寛「タイ国における第三の宗派の形成と終焉:ラーマン・タンマユットの事例から考える民族と上座部宗派」
本研究の目的は、少数民族モン(Mon)僧伽の事例から、タイの上座部宗派について再考することである。タイ国は公認二派制をとるが、そのうち王室に近いタンマユット派は、20世紀初頭、僧伽の中央集権化や仏教実践の標準化に寄与したことで知られる。しかし、今日のモン僧伽に注目すると、タンマユットに属すモンの小集団ラーマン・タンマユットのほうが、もう一方の在来派に属すモン僧よりも民族実践(モン式誦経による出家式)を明確に維持している。なぜこうした逆説が生じたのか。この解答として本研究は、その存在すらほとんど知られてこなかったラーマン・タンマユットの変遷を明らかにしつつ、(1) この小集団が20世紀を通じて第三の宗派としての特徴を備えていたこと、(2) その宗派性と民族実践の持続は、半ばタイ化への抵抗であるとともに、モンの民族宗派にタンマユットの分立性が重なった半ば偶然の結果であったことを論じる。以上を通して、タイの宗派構成やタンマユットの二面性(統合と分立)を再考し、上座部宗派の理解に貢献したい。

松井和久「スラウェシ中部地震・津波の被災地はどんな地域なのか:中スラウェシ州パル市、ドンガラ県、シギ県」
9月28日に発生したスラウェシ中部地震・津波は、2000人以上の死者を出す惨事となり、住民多数が避難所やテントでの生活を余儀なくされている。国際機関などによる緊急救援活動も行われていたが、現地ではすでに復興期間に入ったとの認識で動いている。ここで、今回の震災の被災地であるパル市、ドンガラ県、シギ県は、カイリ族が多数居住する地域であるが、実は、地震、津波、液状化を表すカイリ語が既に存在していた。すなわち、彼らはそれらを歴史的に経験していたのであり、今回の震災は決して予測不可能なものではなかったのである。では、なぜ被害は大きくなったのか。本発表では、現時点まででわかる範囲の情報や資料を活用しながら、被災地の特色と被害をもたらした背景について考察し、日本も関わるであろう今後の復興プロセスにおける課題や問題点についても触れてみたい。

 

●共催(第二部):
京都大学東南アジア地域研究研究所「災害対応の地域研究」プロジェクト