山崎渉 | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

山崎 渉

yamazaki cseas.kyoto-u.ac.jp

部門・職位

環境共生研究部門 教授

専門

食品衛生学、人獣共通感染症学、動物感染症学

研究分野 / キーワード

・病原体の検出技術開発と国内外への普及
・食品衛生・感染症対策分野における国際ネットワーキング





研究概要

グローバル化に伴う病原微生物の世界拡散への対応

グローバル化の進展には、政治統合の推進、経済活動の国際的分業による生産性の向上といった利点がある一方で、地球規模の環境問題、テロリズムならびに感染症や食品由来の病原微生物の世界拡散といった負の側面もある。一例を挙げると、世界のヒト・モノ・動物(食品を含む)の国境を越えた移動の増加に伴い、動物感染症の世界拡散が増加している(越境性動物感染症)。清浄国でアフリカ豚コレラ(ASF)や口蹄疫のような越境性動物感染症が発生した際には、国や地域レベルでの移動制限や家畜の殺処分を伴う封じ込めが行われるため、二次被害を含めた経済損失は甚大となる。2007年に東部アフリカからジョージアに寄港した貨物船が行った厨芥(食品残さ)の不法投棄により、ASFは同国に侵入したと推測されている。その後、ロシア・東欧でも感染拡大が続き、2018年以降、中国・北朝鮮・東南アジアへ侵入し、現在では世界流行となっている。世界の豚飼育数の半数を占める中国へASFが侵入したことで、中国を含めた世界の養豚産業・社会経済への重大な影響が危惧されている。10年以上続いているこのASF流行による世界の経済損失は1,500億ドル(約16兆円)超と試算されている(アフリカ・東欧・ロシアのみの推定被害額)。越境性動物感染症に対する早期摘発・早期封じ込めへの貢献が世界レベルで求められている。

新技術開発と国際ネットワーキング

世界各地でフィールドワークや技術支援活動を経験すると、先人たちの絶え間ない努力のおかげで、現地の研究者が現在の日本に対して、高度な科学技術保有国というイメージを有していることを理解できる。私たちの開発技術に対しても信頼感や肯定感を持ってくれているので、円滑に共同研究を進めることができる。一方で、多くの地域で現在でも重要な課題となっているコレラや狂犬病のような水系感染症や人獣共通感染症の流行に、かつては日本も苦しんできた。グローバル化の負の側面として不可避なこれらの病原体流行の解決策の一つは、過去においても、現在においても、新技術の開発・普及や国際ネットワーキングにある。国際基準を満たす汎用性や信頼性の高い検査法を新開発し、国内外への普及に貢献することで、様々な感染症の制御や食品の安全性確保を目的とする行政政策を合理的に強化できる。このような学際的研究を海外研究者と共同で行い、明治時代の開国から日本が続けてきた道程でもある、海外からの先進技術導入に基づくキャッチアップ型の社会開発を実現することで、食品衛生・感染症制御などの分野における世界各地の課題解決に貢献したいと考えている(写真はタンザニアでのフィールドワーク風景)。

外部資金獲得(日本学術振興会・科学研究補助金)

種別 テーマ 期間 代表/分担
基盤研究(C) カンピロバクターの環境動態解明とシームレスな食中毒制御スキームの開発 2018 – 2020 代表
基盤研究(C) 牛趾皮膚炎病態解明・制圧のための細菌学的・疫学的研究 2014 – 2017 代表